tag:blogger.com,1999:blog-79228026737961650292024-02-07T16:31:51.667+09:00ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクト(日本語版)パキスタン、シンド州北部に所在するヴィーサル・ヴァレー地区には、中期~後期旧石器時代の多数の遺跡が残されており、現代人の南アジアへの進出を研究する上で重要なフィールドです。このウェブログは、パキスタン-日本考古学共同調査隊によって2012年に開始されたヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトを紹介するために開設されました。
人類進化 考古学 旧石器時代 第四紀 更新世 現代人 ホモ・サピエンス 中期旧石器時代 後期旧石器時代 南アジア パキスタン インド シンド州 タール砂漠 砂丘 石器 石刃技法 石刃 エンド・スクレイパー OSL年代Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.comBlogger26125tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-63691343836847692062013-10-30T13:11:00.001+09:002013-10-30T13:11:48.994+09:00再び、ハイルプール<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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すっかり更新が滞っておりました。前回が、英国オックスフォード大学でのワークショップへの参加予告だったので、はや半年以上経過してしまいました。この間、学会発表などを通じていろいろな方のご意見を頂戴し、またとくに印パ国境を挟んで反対側、インド・ラージャスターン州のタール砂漠で調査を続けているイギリス隊とは継続的に情報交換をするようになりました。彼らの成果はすでに公表されているので、ここで紹介したいと思います。</div>
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またわれわれの方でも、2012年9月の調査で得た年代測定試料の処理・年代測定が完了しました。結果については、正式に論文として発表することに成りますので、ここでお知らせすることはできません。もう少々お待ちください。なお、100%期待通りというわけにはいきませんでしたが、インド側でのイギリス隊の成果と照らし合わせて納得の行くものですし、何より、ここパキスタンにおいては初めてとなる重要な成果であることは間違いありません。</div>
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そして、年代測定結果を含めた論文をまとめるにあたって、出土・採集石器の詳細を明らかにするために、再度、ハイルプールのSALU(シャー・アブドゥル・ラティーフ大学)に来ております。今回は短い日程なので、博物館での資料調査に専念する予定ですが、幸いにも、ヴィーサル教授の後任の新館長マストゥール・ブハーリー教授(女性です)のご配慮で、エアコン付の一室を専用にあてがっていただきました。</div>
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出土・採集石器は、マッラー教授、ヴィーサル教授のご配慮で次々に運び込まれてきますので、分類・記載・計測・写真撮影を行なっていきます。</div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj0Pyz4b9_gNeZlOXJaKj-OFofEifLbuGLnCAb8Be_8pwQeX59bZM8xl9Bh-OslXQrKXxkn5vG8S-9gXBj1nEW9Dv7Xh22-PEUHqmIJcplNboq1xYogg0kz7jqfOq2IsI3NdIxutPheAj3p/s1600/IMGP1667.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="211" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj0Pyz4b9_gNeZlOXJaKj-OFofEifLbuGLnCAb8Be_8pwQeX59bZM8xl9Bh-OslXQrKXxkn5vG8S-9gXBj1nEW9Dv7Xh22-PEUHqmIJcplNboq1xYogg0kz7jqfOq2IsI3NdIxutPheAj3p/s320/IMGP1667.JPG" width="320" /></a></div>
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なかなか外を散歩する時間もありませんが、作業部屋の外は水牛がのんびり草を食んでます^^</div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEih_zfvR7B06KXXdiU3hLLN608ug3PCnHhdlkUTqrkp5KDSnHmsamdHOIZstbQ53f-ZsST736kfp1doGrPq1JCedYA4sywBwyMucfMOtC4VYO1GwSUgoL0whHFzy13pm3gNhqjzPyitQtKf/s1600/IMGP1665.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em; text-align: center;"><img border="0" height="211" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEih_zfvR7B06KXXdiU3hLLN608ug3PCnHhdlkUTqrkp5KDSnHmsamdHOIZstbQ53f-ZsST736kfp1doGrPq1JCedYA4sywBwyMucfMOtC4VYO1GwSUgoL0whHFzy13pm3gNhqjzPyitQtKf/s320/IMGP1665.JPG" width="320" /></a></div>
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引き続き、こちらでの様子を報告していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0Shah Abdul Latif University, ハイルプル パキスタン27.4895814 68.76170120000006127.4754954 68.741531200000068 27.503667399999998 68.781871200000055tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-28489500047279049012013-04-11T00:17:00.000+09:002013-04-11T00:17:43.263+09:00オックスフォード大学の国際ワークショップに参加します<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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先日(4/7)は、やや不安な天候でしたがインド考古研究会例会での発表を無事に終えることができました。まだまだ取り組みはじめたばかりの調査研究プロジェクトなだけに、いただいたご質問には答えきれないところが少なくないのですが... これからの進展にご期待いただければと思います。</div>
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さて、先の<a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2013/04/blog-post.html" target="_blank">ポスト</a>とは前後してしまいますが、今週末からイギリスへ行ってきます。今年1月のインド調査でお世話になったカルナタカ大学のラーヴィー・コリセッター教授と、教授の共同研究者であるオックスフォード大学のマイケル・ハスラム氏に招待いただき、英国アカデミーによる英印共同研究「アフリカを出て、南アジアへ: Out of Africa, Into South Asia」のワークショップに参加するためです。ワークショップはオックスフォード大学を会場として、4/16~17両日、イギリスとインドを中心とする各国の考古学者、遺伝学者、古環境研究者などが参加しする予定とのことです。本プロジェクトからは、野口が参加します。</div>
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まだ調査を開始したばかりの本プロジェクトに注目していただき、大変ありがたいことです。それだけ、調査・情報の空白地であるパキスタンというフィールドが注目されているのだと思います。</div>
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なお、プログラムを見ると1日目は朝8時半から夕方5時までみっちり発表、2日目は朝9時から夕方5時までラウンド・テーブルでの討論、となっています。かなりのハードスケジュールですが、またとない機会ですから、最先端の研究をたっぷり吸収して来たいと思います。</div>
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ワークショップの内容については、追って報告したいと思います。</div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh0lSJwx3Uo8tgqakYPazJ9mLMV-kadrVMJbuZniQCN29cUTgKEGj9aM9cdSe4loC1bl8VVcglReW9wa_W1GChGYEXlULIDjkWsT2dAbSaR1UjE5HsCuJ_aAEv-Cd4Fr1RtLdgDEHilxQL9/s1600/VeesarValleyAtOxford01.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="240" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh0lSJwx3Uo8tgqakYPazJ9mLMV-kadrVMJbuZniQCN29cUTgKEGj9aM9cdSe4loC1bl8VVcglReW9wa_W1GChGYEXlULIDjkWsT2dAbSaR1UjE5HsCuJ_aAEv-Cd4Fr1RtLdgDEHilxQL9/s320/VeesarValleyAtOxford01.jpg" width="320" /></a></div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhgJgExrMSSCawqQvFTkVqcvJkRmUSOChbpzqQ5NiDHCGuqjo2Bj1c5-JDRYcwGiuT9sCu-iPAmc9SIkX8S0qghxNh2GtIhFYbEKhKQQebVj1eSBz8E4xOb6PIEpLBNnGTHYQV4d9OMWLTD/s1600/VeesarValleyAtOxford02.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="240" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhgJgExrMSSCawqQvFTkVqcvJkRmUSOChbpzqQ5NiDHCGuqjo2Bj1c5-JDRYcwGiuT9sCu-iPAmc9SIkX8S0qghxNh2GtIhFYbEKhKQQebVj1eSBz8E4xOb6PIEpLBNnGTHYQV4d9OMWLTD/s320/VeesarValleyAtOxford02.jpg" width="320" /></a></div>
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<span style="font-size: x-small;">(画像は、現在、鋭意(?)作成中の発表資料)</span></div>
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なおロンドンでは、シリアの発掘調査で一緒だった旧友と13年ぶりに再開する予定です。これもまた楽しみ^^</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-25483821306912905962013-04-07T06:00:00.000+09:002013-04-10T23:57:50.354+09:00シンポジウム「イランの旧石器」のお知らせ<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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シンポジウムのお知らせです。イランで旧石器時代遺跡の発掘調査を行なっている、筑波大学の常木晃先生が、イランから研究者2名を招聘して『イランの旧石器』と題したシンポジウムが開催されます。</div>
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本プロジェクトからも、野口が参加し、南アジアの中期/後期旧石器時代について報告する予定です。</div>
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常木先生は、国士舘大学の大沼克彦先生らとイラン南部のタンゲ・シカン洞窟で発掘調査を行なっています。先に、<a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2013/03/2012.html" target="_blank">第20回西アジア発掘調査報告会</a>で最新の成果が報告されたとおり、中期旧石器から後期旧石器、晩期旧石器時代の石器群が層位的に発掘されています。そして後期旧石器時代の地層からは、3万年を遡る可能性のある細石器が見つかっているのです。これは、イランとドイツの研究者によって昨年報告されたばかりのガーレ・ブーフ洞窟に続いて2例目となるもので、アフリカ、南アジアとの関連を考える上で非常に重要な意味を持つと考えられるものです。</div>
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イラン西部では、これまでにもヨーロッパから西アジアの地中海沿岸や、コーカサス地方と共通する特徴をもった細石器が見つかっており、もっとも古い年代はヤフテー洞窟などで3万5千年前まで遡ることが分かっていました。ところが、南西部のガーレ・ブーフ洞窟では、それとは異なった技術的特徴を持つ細石器が見つかり、その年代も4万年前まで遡ることが明らかになったのです。</div>
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ガーレ・ブーフ洞窟やタンゲ・シカン洞窟で見つかった細石器は、インド南部やスリランカで見つかっている細石器と非常によく似ています。巻貝製のビーズなどを伴っていることも共通しています。今後、「南回りルート」の現代人の進出を考える上で重要な地域となることは間違いないでしょう。</div>
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なお来日される2名の研究者は、テヘランの国立博物館に所属する旧石器時代の専門家です。イランの旧石器時代研究について最新の情報を知る良い機会となることでしょう。</div>
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もちろん、本プロジェクトにとっても、インドと並ぶ重要なお隣さんです。これを機会に、情報交換を進めたいと思います。</div>
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なお、プログラムの詳細は<a href="http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~jswaa/news.html" target="_blank">こちら(西アジア考古学会ホームページ、上から3件目)</a>もご覧下さい。</div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiE862ubyXV2e8iCob45rJqB-nEz5uqaRpJdsDDQDXLMaMoOBFaC4QHZuB3koVOFCmwM0kYc6y3dYK21FqHp2zHT7yYHWTD5nfIU4Ly0d5mv3-NUuRls0_HCTp9fXtHq6ufMOWawcQivqAN/s1600/892767_460359097378426_58663225_o.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="322" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiE862ubyXV2e8iCob45rJqB-nEz5uqaRpJdsDDQDXLMaMoOBFaC4QHZuB3koVOFCmwM0kYc6y3dYK21FqHp2zHT7yYHWTD5nfIU4Ly0d5mv3-NUuRls0_HCTp9fXtHq6ufMOWawcQivqAN/s400/892767_460359097378426_58663225_o.jpg" width="400" /></a></div>
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Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-5046463862544124642013-04-01T06:00:00.000+09:002013-04-01T18:27:09.361+09:00現代人のグレート・ジャーニー、始まりは遡るか? part1<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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アフリカに出現した現代人が、いつ、どのような経路をたどって世界へ広がっていったのかを追究する研究は、考古学、化石人類学、遺伝人類学が協力し合って進められています。</div>
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このうちもっとも確実なのは化石人類学です。年代が明らかな現代型人類の化石を見つけることで、確実な経路とその年代を知ることができるからです。しかし、人類化石を見つけることは容易なことではありません。確実な埋葬の習慣が広まる後期旧石器時代より以前、すなわち現代型人類より古いタイプの人類化石は、限られた洞窟遺跡からわずかしか見つかっていません。</div>
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一方、考古学は遺跡や資料の数が豊富で、人類化石の証拠を補う重要な手がかりを提供することができます。ところが、石器やそのほかの考古資料だけから現代型人類とそれ以前の古いタイプの人類とを見分けるのは、実は難しいのです。考古学では、石器などの技術や形態から「型式」や「インダストリー」といったグループを見つけ出し、相互の関係を明らかにします。確実な化石証拠を伴っている資料は、「現代型人類の型式」「古いタイプの人類のインダストリー」と言うことができます。しかし、そうした識別ができない「型式」や「インダストリー」の方が多いのです。とくに、化石証拠が乏しい「南回りルート」では、どの「型式」や「インダストリー」が現代型人類の到来を示すのか、議論が続いています。</div>
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そのような中で、1990年代後半から急速に進展したのが遺伝人類学の研究です。現代人、そして化石人骨から抽出されたDNAを比較し相互のつながりを明らかにするだけでなく、DNAの上に見られる変化が一定の速度で発生したと仮定して、異なる遺伝的特徴を持つグループが、いつごろ分化したのかを調べることが可能になったのです。</div>
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そうした研究の成果として示された出アフリカの年代は6~4万年前ということでした。これはヨーロッパや西アジアに現代型人類の化石とそれにともなう石器インダストリーが出現する年代とも一致していたので、広く受け入れられました。</div>
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一方で、東南アジアやオーストラリアなどで発見されていた現代型人類の化石の年代から見ると、出アフリカ後、きわめて短期間にオーストラリアまで現代人が進出したと考えなければなりません。このため、「南回りルート」では海岸沿いに、急速に人類が東へと進んだとする「沿岸特急」仮説が示されたのです。</div>
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ところが、最近のインドやアラビア半島での考古学調査の結果からは、もっと古く10~8万年前にはすでに現代型人類が進出していたのではないか、とする説が示されるようになりました。しかし遺伝人類学の示す年代とは齟齬があります。当然、論争が巻き起こるとともに、たとえば10~8万年前に出アフリカを果たしたグループは、その後子孫を残すことなく途絶えてしまったので遺伝学的には痕跡を見出せないのではないか、といった説も示されたりしています。</div>
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そのような中で、<a href="http://dx.doi.org/10.1038/nrg3295" target="_blank">昨年(2012年)9/20付けのNature Review Genetics誌に掲載されたあらたな論文</a>は、現代人の起源に関して遺伝学が示してきた年代が、古い方へと巻き戻されると指摘しました。遺伝学では、現在、および化石人骨から抽出される過去のDNAに見られる変異について、一定の速度で蓄積されると仮定します。そして、化石記録などにもとづいていくつかの基準点を設けて、変異が蓄積される速度を計算するのです。</div>
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この論文では、最新の人類化石の年代にもとづき基準点を設定しなおして、変化の速度を再計算したと言うことで、下に引用したグラフのように、1)現代人のグループとネアンデルタールが分かれた年代、2)現代型人類の出現年代、3)出アフリカの年代、4)出アフリカ後、ヨーロッパ系とアジア系の集団が分かれた年代、がこれまでの説より古くなることを示しています(<a href="http://www.nature.com/news/studies-slow-the-human-dna-clock-1.11431" target="_blank">Nature誌9/20号の解説記事はこちら:英文</a>)。</div>
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<a href="http://www.nature.com/polopoly_fs/7.6444.1347977089!/image/Redating_graphic.jpg_gen/derivatives/fullsize/Redating_graphic.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="159" src="http://www.nature.com/polopoly_fs/7.6444.1347977089!/image/Redating_graphic.jpg_gen/derivatives/fullsize/Redating_graphic.jpg" width="320" /></a></div>
この年代は、インドやアラビア半島において考古学調査を進めていたグループから非常に好意的に受け止められています。彼らの主張をバックアップする結果なのですから、当然ですね。また遺伝人類学側でも、この「改訂年代」を支持する研究が次々に報告されています。その中で、つい最近、世界各地の旧石器時代~新石器時代の人類化石から抽出されたDNAのデータを組み込んだ研究成果が、Current Biology誌に報告されました。<br />
この最新の論文については、次回、解説したいと思います(続く)。<br />
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Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-65534050258918791682013-03-31T11:29:00.003+09:002013-04-11T00:19:41.601+09:00西アジア発掘調査報告会で2012年調査について報告しました<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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3月23・24日の2日間にわたって、東京・池袋の古代オリエント博物館を会場として開催された、「平成24年度 考古学が語る古代オリエント/第20回西アジア発掘調査報告会」で、2012年2月と9月に実施したヴィーサル・ヴァレーでの発掘調査について報告してきました。今回は、日本において発掘調査について報告する最初の機会ということで、発表時間の制約もありましたし、調査の背景から経緯、現在進行中の分析の途中成果までを簡潔(?)にまとめて発表させていただきました。もっと、現地の様子や調査の実態を詳しく知りたいと言う方は、先にご案内いたしました<a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html" target="_blank">インド考古研究会例会</a>へ、ぜひお越しください。こちらでは、現地の様子など多数の写真にて詳しく報告させていただく予定です。</div>
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それはさておき、今回の報告会では、日本隊による多数の発掘調査プロジェクトの成果が報告されました。調査の対象となる遺跡の性格や時代は多様ですが、最新の機器や方法を導入して海外隊の調査と比肩できる成果が次々と報告されています。大いに刺激を受けると同時に、予算・人員的に規模が小さな(小さ過ぎる;)本プロジェクトでも導入可能な方法を考えるよい機会となりました。</div>
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また本プロジェクトは、パキスタン、南アジアでの調査でありますが、同じく低緯度の乾燥砂漠地帯で進められている調査の報告などは、比較研究の上でも大いに参考になります。</div>
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今後とも、継続的に調査成果をこの報告会で発信できるようにがんばって行きたいと思います。</div>
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なお、<a href="http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~jswaa/publications.html" target="_blank">報告会の資料集は西アジア考古学会で頒布中</a>です。</div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiZmJPvH1qL8_SC7nZl-cFN2llObQvSwglNKgN8nxjeLCBVDr9qmRD8rBmd7HkSYI_kywNP9xHgycPlOH_5WqVQ8oioKspzd39pA_JvjVamnrl0Q9eb38kEOB5JrtsWpPrbVR9mgDv_AYms/s1600/DSCN0346.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="240" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiZmJPvH1qL8_SC7nZl-cFN2llObQvSwglNKgN8nxjeLCBVDr9qmRD8rBmd7HkSYI_kywNP9xHgycPlOH_5WqVQ8oioKspzd39pA_JvjVamnrl0Q9eb38kEOB5JrtsWpPrbVR9mgDv_AYms/s320/DSCN0346.JPG" width="320" /></a></div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgXmK0LxetxGSqEMU75bZiI9FgK4k6Ql4_FLL9r_HKHL9NGtDpzfsMByQ39lKHxHlX51-222P5gn79kSLHK4wmJT2XBA_iGXzMrO62lPqJ6VPWLEpy2TeRXIAWe7NDzNUsIv8sZUW-I5LSt/s1600/DSCN0351.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="240" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgXmK0LxetxGSqEMU75bZiI9FgK4k6Ql4_FLL9r_HKHL9NGtDpzfsMByQ39lKHxHlX51-222P5gn79kSLHK4wmJT2XBA_iGXzMrO62lPqJ6VPWLEpy2TeRXIAWe7NDzNUsIv8sZUW-I5LSt/s320/DSCN0351.JPG" width="320" /></a></div>
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<span style="font-size: x-small;">(報告風景の写真は、下岡順直氏にご提供いただきました。ありがとうございますm(_ _)m)</span></div>
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追記:PC版では、ページ右側のコラムに、学会・研究会発表情報、新刊書籍等、プロジェクトからの発信に関する情報を掲載するようにしました。ご参照ください。<br />
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<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh0rhqgybri8u-gk9PVJlyNGx6WtjZUnBnclEW4YsvJfZQYXtSwccV5y7oV431jv6C88DKgZCwKYYC6ts9QWCe_HVUrV5k6axuUknGGn3tfca8XIjSK8gA9qUZ8gCP_Cgj-PYup-Fv4Qq_Y/s1600/JSWAAex2013cover.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="200" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh0rhqgybri8u-gk9PVJlyNGx6WtjZUnBnclEW4YsvJfZQYXtSwccV5y7oV431jv6C88DKgZCwKYYC6ts9QWCe_HVUrV5k6axuUknGGn3tfca8XIjSK8gA9qUZ8gCP_Cgj-PYup-Fv4Qq_Y/s200/JSWAAex2013cover.jpg" width="141" /></a></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
(報告集の表紙)</div>
<br /></div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-4499338799457312992013-03-17T14:26:00.001+09:002013-03-17T14:38:35.653+09:00インド考古研究会のお知らせ<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
今週末は第20回西アジア発掘調査報告会です。2012年に実施した調査の経緯と経過について報告いたします。なお、発掘調査時に採取した年代測定および堆積物の分析も結果が出はじめていますが、こちらについては、もう少し検討を加えてから順次報告することになります。もう少々お待ちください。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
引き続き、年度が替わって最初の土曜日、4月6日には、インド考古研究会例会でも発表します。会場は、東京メトロ丸の内線・南北線「後楽園」駅、都営地下鉄三田線・大江戸線「春日」駅と直結した文京区シビックセンター内になります。会員以外の方も、会場費・資料代(数百円)のみでご参加いただくことができます。よろしければどうぞ。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
なおインド考古研究会例会では、調査の内容はもちろんのこと、現地の風景や生活、周辺の考古遺跡の現状なども報告する予定です。旧石器時代に限らず、南アジア、パキスタンに興味をお持ちでしたらぜひお越しください。お待ちしております。</div>
<div>
</div>
<div>
<br /></div>
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<hr />
</div>
<div style="text-align: center;">
<b>インド考古研究会例会</b></div>
<div style="text-align: left;">
日 時 :2013年4月6日(土)18:00開場 18:30~例会発表<br />
場 所 :文京区シビックセンター内3-A会議室<br />
発表者 :野口 淳<br />
タイトル:パキスタン・シンド州の旧石器時代遺跡群調査<br />
<div style="text-align: right;">
:ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクト2012」</div>
</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhCLaCujzHur05WzkG2x9MhANmJTRcll_VCaAfBRMw4onMorZmUkoWODMW_JPlC8WFgb4BQ80YtneaFX1RvDpghWn2ByX27W-K2vWWNBpDOUrhNp5JUnhJAkiov7fLgcmuc9eoSiT8IfNjP/s1600/IMGP9046re.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="213" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhCLaCujzHur05WzkG2x9MhANmJTRcll_VCaAfBRMw4onMorZmUkoWODMW_JPlC8WFgb4BQ80YtneaFX1RvDpghWn2ByX27W-K2vWWNBpDOUrhNp5JUnhJAkiov7fLgcmuc9eoSiT8IfNjP/s320/IMGP9046re.JPG" width="320" /></a></div>
<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgO8e_-fkcgG-1WnADy7XYenm0HQ5DjjXY2J9gdmSmzTsf2cw0yLAQrc-lZQcU9oiZubgHETaDO2icZ0jCpTvikTUTw9ZrJyYiMqmJ08-m865cx1gcxBENZM2U_fnItVh84Ag2cjhcCTH3M/s1600/IMGP8893.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="212" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgO8e_-fkcgG-1WnADy7XYenm0HQ5DjjXY2J9gdmSmzTsf2cw0yLAQrc-lZQcU9oiZubgHETaDO2icZ0jCpTvikTUTw9ZrJyYiMqmJ08-m865cx1gcxBENZM2U_fnItVh84Ag2cjhcCTH3M/s320/IMGP8893.JPG" width="320" /></a></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;">(写真上:2012年9月の調査参加者、中央左が下岡氏、同右がマッラー教授、その右が野口)</span></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;">(写真下:2012年9月の発掘風景。第42地点で試料採取用トレンチを掘削中。気温だいたい37度くらい)</span></div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-30185391307324152092013-03-13T22:01:00.001+09:002013-03-13T22:01:39.979+09:00第20回西アジア発掘調査報告会のお知らせ<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjlf9CyQiwZHpyXJLE5aL7sym8LKMlp7eHfa7Zx-bXPuvOLxNWlhQ1rwwXJfpQDHaxbctixaFzrxy0PekzUJPQwapwoNdTaJsHOhHW4moVNgGHEhmrpL8EXEkHIhZCM0bthj9VKitFiH0Oy/s1600/WA.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="400" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjlf9CyQiwZHpyXJLE5aL7sym8LKMlp7eHfa7Zx-bXPuvOLxNWlhQ1rwwXJfpQDHaxbctixaFzrxy0PekzUJPQwapwoNdTaJsHOhHW4moVNgGHEhmrpL8EXEkHIhZCM0bthj9VKitFiH0Oy/s400/WA.jpg" width="277" /></a></div>
西アジア発掘調査報告会は、西アジア考古学会と古代オリエント博物館の主催による、西アジアを中心に広く周辺地域も含め日本隊が実施している考古遺跡の発掘調査の成果が発表される場です。「西アジア」とありますが、東ヨーロッパ(ブルガリア)からアラビア、イラン、中央アジア諸国、そしてパキスタンとインドまで、幅広い地域での発掘調査が対象となっています。一説によると、アレクサンドロス大王が遠征した範囲はすべて含まれるのだとか。<br />
今年度は、3月23・24日の両日、例年通り、池袋はサンシャインシティ文化会館にある<a href="http://www.sa.il24.net/~aom/" target="_blank">古代オリエント博物館</a>を会場として16件の発掘調査報告が行なわれます。わたしたちヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトも2012年調査の成果を報告します(23日10:10~の予定です)。資料代¥1,000でどなたでも参加できますので、ご興味をお持ちの方はぜひ。今回は、カザフスタン、キルギスタン、イラン、アゼルバイジャン、トルコ、ヨルダン、パレスティナ、エジプト、ブルガリアでの調査の報告のほか、23日午後には第20回を記念する講演会、24日午後にはトルコ人研究者による講演会も催されます。<br />
報告会の案内: <a href="http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~jswaa/conference.html" target="_blank">→西アジア考古学会</a> <a href="http://www.sa.il24.net/~aom/moyo130323.html" target="_blank">→古代オリエント博物館</a><br />
プログラムの詳細は<a href="http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~jswaa/20-houkokukai.pdf" target="_blank">こちら</a></div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-32748194702349990992013-02-12T06:00:00.000+09:002013-02-12T06:00:04.276+09:00ネアンデルタールと現代人-交替? 淘汰? 共存?-<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
南アジアから少々はなれまして、ヨーロッパはスペインにおける最新の研究成果のニュースです。 スペイン南部の「最後のネアンデルタール人」の年代を再検証した結果、従来の報告よりも1万年ほど古くなるという論文が、アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)の2月4日付早期版(early edition)に発表されました(<a href="http://www.pnas.org/content/early/2013/01/29/1207656110.abstract?sid=853db2f4-ccb6-42bd-a8b6-371bb56596cf" target="_blank">リンク</a>:本文閲覧は有料またはサインインが必要)。<br />
かねてから、スペイン南部のネアンデルタール人の遺跡はヨーロッパでもっとも新しい年代(3万5千~3万年前:較正年代)が報告されており、現代人がヨーロッパに進出した後、住処を追われたネアンデルタール人にとっての最後の避難地だったのではないか、とされてきました。ところが、今回発表された論文では、年代測定の試料となる骨について再検証したところ、スペイン北部のものと比べて南部のものは残り具合がよくなく、そこから抽出されたコラーゲンにもとづく年代測定結果には試料汚染の影響が大きいこと、そのために「若い」年代が測定されている可能性があることを指摘しています。その上で、条件の良い遺跡・試料に絞って再測定を行なったところ、信頼できる年代として、従来言われていたよりも1万年ほど遡る数値が得られたと言うのです。<br />
と、なると...ネアンデルタール人がスペイン南部から姿を消したのは、現代人が進出してくるよりも前、ということになります。したがって、ネアンデルタール人は現代人に追いやられたのではなく、ネアンデルタール人がいなくなった後に現代人が進出してきたのかも?! ましてや、現代人がネアンデルタール人を駆逐、虐殺したなどというストーリーは成り立たない?! (英語の解説記事としては、こちら:<a href="http://www.pasthorizonspr.com/index.php/archives/02/2013/last-neanderthals-of-southern-iberia-may-never-have-met-homo-sapiens" target="_blank">Past Horizons</a>もご参照ください)。<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/95/Neandertaler-im-Museum.jpg/800px-Neandertaler-im-Museum.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="240" src="http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/95/Neandertaler-im-Museum.jpg/800px-Neandertaler-im-Museum.jpg" width="320" /></a></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;">(写真は、ネアンデルタール人の復元像。独・ネアンデルタール博物館:Wikimediaコモンズより)</span></div>
<br />
<br />
さて、先にご紹介しました<a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2013/02/blog-post_11.html" target="_blank">『ホモ・サピエンスと旧人』</a>は、<a href="http://www.koutaigeki.org/" target="_blank">文部科学省科研費補助金「新学術領域研究」 ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究</a>(通称「交替劇科研」)により開催された同名の公開シンポジウム(2012年6月16~17日:東京大学小柴ホール)の記録集です。「交替劇科研」は、人類の進化、われわれ現代人の祖先がいつどのようにして世界各地へ広まっていったのかを、人類学、考古学だけでなく、多様な研究分野の協同により解明しようとする日本発の研究プロジェクトです(ちなみに、私・野口は公開シンポジウムにゲスト・スピーカーとして参加させていただいただけです^^;)。<br />
この「交替劇科研」をはじめとして、いま、世界中の先史人類学者、旧石器考古学者が注目している大きな研究テーマが、われわれ現代人の出現と旧人類との関係です。とくに調査事例も多く、研究が先行してきたヨーロッパでは、われわれの直接の祖先ではないネアンデルタール人が、およそ4万年前頃までそこかしこに暮らしていたことが知られているだけに、彼らの運命と現代人との関係が長らく議論の対象となっています。<br />
ひと昔前、すべての教科書や概説書には、原人の段階以降、アメリカおよびオーストラリア以外の世界各地に広がった人類は、それぞれの土地で進化していったと説明されていました(他地域進化説)。ヨーロッパでは、ネアンデルタールが現代人の祖先となった、というわけです。現代人の祖先がアフリカに登場し、そこから世界各地へ広まったとする単一起源説が遺伝人類学から提唱されたのが25年前のことです。大学生になったばかりの頃、受講した人類学の講義では、両論併記(どちらかといえば他地域進化説が強調されていた?)でした。<br />
その後、化石人骨から直接DNAが採取され、現代人とネアンデルタールとの間が思いのほかかけ離れていると言うことが指摘され、またアフリカにおける考古学や人類学の資料が増加すると、アフリカ単一起源説が完全に優勢になりました。その間に、上述のとおりスペイン南部の「最後のネアンデルタール人」の遺跡が現代人の進出以後の年代であると報告されたため、現代人に追いやられたネアンデルタール人がスペイン南部で細々と生き残ったとする説や、その間に両者の文化的交流があったのではないか、とか、逆に現代人により激しく駆逐されたのではないか、とか、諸説が出されていたのです。<br />
そして2010年、現代人とネアンデルタールの間にわずかながらも遺伝的関係があるとする<a href="http://www.sciencemag.org/content/328/5979/710.full" target="_blank">論文</a>が発表されました。しかもその関係は、アフリカの現代人たちにはほとんど見られず、アフリカ以外の現代人に認められるということから、現代人の出アフリカ後に、現代人とネアンデルタール人との間に遺伝的交流(交配)があったのではないか、ということになりました。<br />
といった具合に、現代人とネアンデルタール人との関係は、この25年ほどの間に次々と定説が塗り替えられ続けてきました。そして今、現代人との共存を示すと考えられた考古学・人類学の資料が見直しを要請されることになりました。この議論、決着を見るのはまだまだ時間がかかりそうです。<br />
<br />
ちなみに「南回りルート」では...そもそも化石人骨が見つかっていないために、ネアンデルタール人がいたのか、それとも別の種類の旧人がいたのかということからして、まだ分かっていません。どこかで化石人骨を見つけることができたら、それこそ「21世紀最大の発見」になるでしょうね。</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-66738610045602781302013-02-11T15:19:00.000+09:002013-02-11T15:19:37.095+09:00新刊書籍のご案内<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
PC版で本ブログを閲覧している方は、すでにページ右上の案内(宣伝)を見ていただいていることと思いますが、このたび<a href="http://www.book61.co.jp/" target="_blank">六一書房</a>様から刊行された書籍に、南アジアの中期~後期旧石器時代についての一節を執筆させていただきました。<br />
昨年(2012年)6月に、東京大学で開催されたシンポジウムでの発表と議論を収録したものです。アフリカ・西アジアから、ヨーロッパ、北・中央・南アジア、東南アジア~オセアニア、中国、日本まで、現代型人類の出現と旧人類との交替についての最新の考古学的研究成果を、これ一冊で、しかも日本語で読むことができるという点で、これまでに類書のない画期的な書籍だと思います。ご注文は<a href="http://www.book61.co.jp/book.php/N07272" target="_blank">こちらから(六一書房)</a>どうぞ。なお、部数に限りがあるそうですので、お買い求めはお早めに(販促;)。(なお、ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトの調査については、まだ途上なので言及していません。また別の機会に...)<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://www.book61.co.jp/book_img/008/N07272.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="http://www.book61.co.jp/book_img/008/N07272.jpg" /></a></div>
<br />
さて、自画自賛ばかりではなんですので、課題についても向き合っておかないといけないですね。<br />
まず、南アジアについては、確実な考古資料がまだ少ないことがあります。インドでの旧石器時代遺跡の発掘調査の歴史は古く、すでに100年を越える学史があるのですが、現在の考古学および人類学の研究が必要とする理化学年代や地学的背景の説明が欠けている資料が大多数を占めているのが現状です。このため、現代型人類の南アジアへの進出を語る際に言及される遺跡や石器群は限られたものになっているのです。<br />
また隣接する地域-南アジアへ至る経路、または南アジアから先へと至る経路上の、アラビア半島南部、イラン南東部や東南アジアの状況がよく分かっていないことも課題です。ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトは、その空白域を埋めるべく、パキスタンの遺跡での調査を進めているわけです。<br />
もうひとつの課題は、南アジアに限らず、旧石器考古学全般に言えることですが、人類学や遺伝学から発信される話題性抜群の議論に対して十分に応答できていないのではないか、ということです。確実な資料が少ない、とは言え、化石人骨資料に比べれば考古学資料ははるかに豊富です。しかしながら、考古学資料そのものの説明に終始してしまい、それが人類の進化や世界各地への進出とどのように関わるのかを、考古学者以外に伝えることが難しくなってしまっている側面があると思います(自戒をこめて)。たとえば、ある時代や地域に特徴的な石器群には、それぞれ考古学的な名称がつけられています。有名どころ(とは言っても仲間内の専門用語ですが)では「ムステリアン」「オーリナシアン」とか、もっと細かくなると「バチョキリアン」「セレツィアン」「ボフニシアン」「ヌビアン」等々、ほとんど「じゅげむ」の世界です。<br />
もっと単純に、この石器群は現代人、この石器群は旧人が作ったもの、とすっぱり言及できればよいのですが、実際のところは、化石人骨が伴わない限りなかなか難しいわけです。また人骨が出土したところで、出土状況の検証や年代など越えなければならないハードルは山ほどあります。このため、考古学者の物言いは、とても慎重なものになってしまいます。よく言えば、手堅い、でも専門家でない人から見ると歯がゆくて仕方がない、というか下手をすれば何を言っているのかまるで分からない、という事態になるわけです。<br />
ここが考古学者にとっての最大の悩みどころ。本ブログでも、できるかぎり分かりやすく、しかし端折らずに丁寧に解説する、ということを心がけて調査の目的や成果を解説したいと思います。<br />
<br />
なお、本書に書いた内容以降(つまり2012年後半から現在まで)の調査研究の進展を含めた状況については、<a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2013/02/259.html" target="_blank">前回のポスト</a>でご案内した、石器文化研究会例会で紹介したいと思います。興味のある方は、どなたでも参加できますので、ぜひお越しください。</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-17038910446047547452013-02-06T06:00:00.000+09:002013-02-06T06:00:03.048+09:00石器文化研究会第259回例会のご案内<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
この2月から5月にかけて、2012年中の調査成果を踏まえた報告、研究発表を各所で行なわさせていただく予定となっております。スケジュール・プログラムが定まったものから、順次、ご案内させていただきます。<br />
まずはじめは、石器文化研究会第259回例会です。「アウト・オブ・アフリカII 南回りルートを追跡する」と題して、アラビアからインドまでの地域における最近(2012年12月まで.一部、最新の情報も追加あり?)の調査・研究動向を紹介するとともに、ヴィーサル・ヴァレーでの発掘調査、インドでの現地踏査などの成果も紹介したいと思います。なお、研究会のホームページはまだ情報が更新されていないようですので、会員向けメーリング・リストに配信された内容を以下に記しておきます。石器文化研究会の例会は、会員外でも資料代のみで参加できますので、興味をお持ちの方は、是非どうぞ!!<br />
なお、ヴィーサル・ヴァレーにおける調査の様子や成果の速報については、3月に予定されているインド考古研究会(日程未定)、および西アジア発掘調査成果報告会(3月23~24日)でも報告する予定です。<br />
<br />
<hr ridge="" />
<div style="text-align: center;">
石器文化研究会第259回例会</div>
<div style="text-align: center;">
<br /></div>
<div style="text-align: left;">
日 時:2013年2月16日(土)14:00~</div>
<div style="text-align: left;">
場 所:明治大学考古学実習室(猿楽町第二校舎3階) ※猿楽町構内案内図は<a href="http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html" target="_blank">こちら</a></div>
<div style="text-align: left;">
題 目:「アウト・オブ・アフリカII 南回りルートを追跡する」</div>
<div style="text-align: left;">
概 要:遺伝人類学研究の進展とともに、現代人の出アフリカ後の拡散ルートとして注目されている「南回りルート」に関する調査、研究の現状をアラビア~インドまで概観し、また関連遺跡や石器群について紹介する。</div>
<div style="text-align: left;">
<br /></div>
<div style="text-align: left;">
【参考文献】 野口(2013)「南アジアの中期/後期旧石器時代 「南回りルート」と地理的多様性」『ホモ・サピエンスと旧人 旧石器考古学から見た交替劇』、六一書房<br />
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjR8Ntw2HrzbdaMy7C-VGlp55rPgYv4F6vEGBxWUgvPkiMFmy79BpL08oabFee5mAX2LjgoHxbrl-yLfQ8HLfXmCezsd3ZZlDnSq2fljVVerKhhV-F4A4Eny9KVW26LUFzhkwoBePnQ0lXP/s1600/IMGP4704.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="212" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjR8Ntw2HrzbdaMy7C-VGlp55rPgYv4F6vEGBxWUgvPkiMFmy79BpL08oabFee5mAX2LjgoHxbrl-yLfQ8HLfXmCezsd3ZZlDnSq2fljVVerKhhV-F4A4Eny9KVW26LUFzhkwoBePnQ0lXP/s320/IMGP4704.JPG" width="320" /></a></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;">写真は、インド南部ジュワラプーラム遺跡群の景観(2013年1月撮影)</span></div>
<div style="background-color: white; color: #2a2a2a; font-family: 'Meiryo UI', Meiryo, 'MS PGothic', Osaka; font-size: 13px; line-height: 17px;">
<span style="font-size: small; line-height: normal;"></span></div>
<div dir="ltr" style="background-color: white; color: #2a2a2a; font-family: 'Meiryo UI', Meiryo, 'MS PGothic', Osaka; font-size: 13px; line-height: 17px;">
<span style="font-size: small; line-height: normal;"></span></div>
<div dir="ltr" style="background-color: white; color: #2a2a2a; font-family: 'Meiryo UI', Meiryo, 'MS PGothic', Osaka; font-size: 13px; line-height: 17px;">
<span style="font-size: small; line-height: normal;"></span></div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-24033305584581086232013-02-05T06:00:00.000+09:002013-02-05T06:59:00.986+09:00しばらくぶりですが、経過報告です<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
あけましておめでとうございます。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
前回の投稿が夏季調査開始時だったので、丸4ヶ月以上も音沙汰なしでした。申し訳ありません、いろいろと忙しかったので(言い訳)。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
さてこの間、夏季調査はもちろん無事終了しました。3地点に4ヵ所の調査区を設定して発掘、初期の目的を達成しただけでなく、予期した以上の成果が得られました。現在は、発掘調査で得られたサンプルの分析(年代・堆積)および発掘調査データの整理を行なっているところです。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
また2012年10月からは、3Dレーザー・スキャナを利用した石器の三次元計測と解析システムを確立するための作業にも取り掛かりました。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
さらに2012年12月から2013年1月にかけて、私(野口)は、アラビア半島南部のオマーンで遺跡分布調査に従事してきました。詳しい成果はまだ公表できませんが、ここでも「南回りルート」に関連する知見が得られました、とだけ言っておきましょう。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
そしてオマーンから帰路、インド南部の重要遺跡、ジュワラプーラム遺跡群を、インド側の調査代表である、カルナタカ大学のラーヴィー・コリセッター教授のご案内で、訪問することができました。ここでは、なんと本物のYTT(新規トバ・タフ)を見て、触って、サンプルを取ってくることができました!!</div>
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一連の調査や分析の経過や成果については、順を追って紹介していきたいと思います。できる限り定期的に更新できるようにしたいと思いますので、もう少々お待ち下さい(材料は、たくさんありますので...)。</div>
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<br /></div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh-yFGG3im_E8UASTgm98zZZGW4jMs6_nmkUgwdkGYS-u0XP_bcpXMDaSZOLgsMXJ5wFSJsnW31ElU2R6Dz3ZbdFB8-_X-k0q4Kh3jr7G-Eq_sY7FPiw0IHs9FWqzoyJ_ID_MviUj2X_1DK/s1600/IMGP8799.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="212" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh-yFGG3im_E8UASTgm98zZZGW4jMs6_nmkUgwdkGYS-u0XP_bcpXMDaSZOLgsMXJ5wFSJsnW31ElU2R6Dz3ZbdFB8-_X-k0q4Kh3jr7G-Eq_sY7FPiw0IHs9FWqzoyJ_ID_MviUj2X_1DK/s320/IMGP8799.JPG" width="320" /></a></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;">写真は、ヴィーサル・ヴァレーでの夏季調査風景。砂丘を構成する砂層から、念願の旧石器を発掘することができました!!</span></div>
<br />
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjKQg1yK_2TVbIr4QqrkijZg55m3UT-qJlsnj_XzYcw6jiplTylXlIp9Nt_LrPRUVwatvwsIZVk8KteHlILXLedrb-3F_gjxne-ehZ-DuI9kzxzlzlqvKIrjF8stbFgts2eKa9nXu-qBU-U/s1600/IMGP8386.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="212" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjKQg1yK_2TVbIr4QqrkijZg55m3UT-qJlsnj_XzYcw6jiplTylXlIp9Nt_LrPRUVwatvwsIZVk8KteHlILXLedrb-3F_gjxne-ehZ-DuI9kzxzlzlqvKIrjF8stbFgts2eKa9nXu-qBU-U/s320/IMGP8386.JPG" width="320" /></a></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;"> こちらは、砂丘の形成年代を知るための深掘りトレンチ。ここでも、狙い通りに砂丘の層序を捉えることができました。</span></div>
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<span style="font-size: x-small;"><br /></span></div>
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgcNKbQpX6FqgyAVyA0FPoWcbup6P2uGmbu7HjZGecPS0JnbtPl3Nmq-Y7ArD7hxqkiHvQcX4ReBOIy-PtlkLMqmdCfC3vwtIEiq95Am-DPYtwXvf5nd8u5DTdfhRnSYgMPVPOuDgWInDDJ/s1600/IMGP8936.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="212" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgcNKbQpX6FqgyAVyA0FPoWcbup6P2uGmbu7HjZGecPS0JnbtPl3Nmq-Y7ArD7hxqkiHvQcX4ReBOIy-PtlkLMqmdCfC3vwtIEiq95Am-DPYtwXvf5nd8u5DTdfhRnSYgMPVPOuDgWInDDJ/s320/IMGP8936.JPG" width="320" /></a></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;">地層を確認して、サンプルを採取する下岡さん。現在、日本国内で分析中です。</span></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;"><br /></span></div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-79224415061690685642012-09-17T22:49:00.002+09:002012-09-17T22:49:33.973+09:002012年夏季調査の目的<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
本日(9/17)、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学(SALU)にて、今回の調査についての日程や方法を相談しました。<br />
今回の調査の目的は、ヴィーサル・ヴァレー地区遺跡群の年代を確かめることです。<br />
このために、大きく2つの調査を行ないます。<br />
<br />
ひとつめは、遺跡群が形成され、残されている地形=砂丘の年代を知ること。このために、遺跡群が広がる砂丘の全体を踏査して、その状態を確認しながら、砂丘の砂のサンプルを採取する地点を選定します。必要に応じて、斜面を削ったり、トレンチ(試掘坑)を掘り下げます。採取したサンプルは、光ルミネッセンス法による年代測定を実施します。これは、砂丘砂に含まれる石英粒子を対象として、それが埋没した年代を明らかにするものです。また、地点ごとに、砂粒の大きさの割合や含まれる鉱物の分析を行ないます。<br />
これらの年代測定や分析は、砂丘が、いつ頃、どのようにできたのか、またその後、どのような変化を被ったのかを明らかにするものですが、必ずしも遺跡そのものの年代を明らかにするわけではありません。砂丘が形成され、移動したり、削られたりする過程の中で、どのように遺跡や遺物が残されたのかを確かめなければなりません。<br />
もちろん、そのための調査、分析も実施する予定ですが、まずは、対象となる砂丘についてその形成の年代と過程を把握することが出発点になるのです。<br />
...と言っても、何のことか分かりづらいですよね。追って、もう少し詳しく解説したいと思います。<br />
また、ヴィーサル・ヴァレー地区にはおもに旧石器時代(10~3万年前くらい:中期~後期旧石器時代と推測しています)の遺跡が、砂丘の頂部、斜面から砂丘間の凹地に残されていますが、10kmほど北北西のドゥービ地区の砂丘には中石器時代(1万年~8千年前くらい?)の遺跡が、また東~北東のナラ川沿いの砂丘には新石器時代の遺跡が残されています。こうした、明らかに年代の異なる遺跡が残されている砂丘についても、年代や形成過程を知るための調査、分析が実施できるかどうかを確かめることも、今回の滞在期間中に行ないたいと考えています。ヴィーサル・ヴァレー地区だけでなく、一帯の砂漠の環境がどのように変化し(または変化せず)、その中で人類がどのような適応を遂げ、生活していたのかを知ることが、将来的な目標の一つだからです。<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiLRlBNpO5c_aFFmvORG6Da9a_Hde0WFwn8cCX1Xqf-GmhBK_M5F7ubCyHENUPrxk39iYSuaDVQcgvnifYc6xyS_YAUyEJklbcRCoiICNrgJ8dnG2cgvKwWsXJKMnbM2AOQAJbSBGLILS08/s1600/IMGP3424.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="212" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiLRlBNpO5c_aFFmvORG6Da9a_Hde0WFwn8cCX1Xqf-GmhBK_M5F7ubCyHENUPrxk39iYSuaDVQcgvnifYc6xyS_YAUyEJklbcRCoiICNrgJ8dnG2cgvKwWsXJKMnbM2AOQAJbSBGLILS08/s320/IMGP3424.JPG" width="320" /></a></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;">(写真は、2012年2月に予備的な発掘調査をした第85地点。比高差5mほどの小丘の上に石器集中部が残されています)</span></div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;"><br /></span></div>
ふたつめは、考古学的に遺跡の年代を推定するための材料=特徴的な技術や形態を示す石器を表面採集により収集することです。ヴィーサル・ヴァレー地区で見つかっている100近い地点のうち、いくつかの地点を選定して、1×1mの範囲に残されている石器を一定数量以上ずつ拾い集めます。そして、そこに含まれる石器の型式、点数、細かな特徴を確認します。<br />
この方法では、数値的な年代を知ることはできませんが、近隣地域の資料と比較することで、おおよその年代、時代の目星をつけることは可能です。また、石器の型式、その組み合わせは、石器を使った生活の内容を復元するためにも重要な手がかりとなるでしょう。<br />
<br />
今回は、この二つの方法中心に、さらにいくつかの記録・分析方法を組み合わせて、ヴィーサル・ヴァレー地区に残された旧石器時代遺跡の実態を解明するための調査に取りかかります。<br />
現地調査は、明後日9/19から開始する予定です。</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-8233967176908083362012-09-17T11:46:00.001+09:002012-09-17T11:46:33.867+09:002012年度夏季調査がはじまりました<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
事前にお知らせしていなかったので唐突ですが、2012年度夏季調査を開始しました。これから、約2週間の予定で、日本からは野口(考古学)、下岡(年代測定)の2名が参加、パキスタン側のマラー教授、ヴィーサル教授らと、分布調査、年代測定および堆積学的分析のためのサンプリングを行ないます。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
日本から、調査地のあるハイルプールまで、今回は2日がかりの移動でした(下岡さんは日本国内の移動があったので3日がかり)。まずは、成田から、バンコク経由でカラチまで。今回は乗り継ぎが良かったので、日付けが変わらないうちにカラチに到着です。乗り継ぎ待ちの2時間を入れて、合計14時間の移動です。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgEYZFFiJi_rVUwoLhfRF1yQN7p0J1weWKTkEkgDk1irB22Sf8gW4T6aG_mFpbvGdSs7T_PaM9koRhMUx16pyUmbOZu68EHSdBE7RHGSKuJd8FjNaA0F6uyQSu-r8XUH6_2tPZ9MQ-7UWlI/s640/blogger-image--411959050.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgEYZFFiJi_rVUwoLhfRF1yQN7p0J1weWKTkEkgDk1irB22Sf8gW4T6aG_mFpbvGdSs7T_PaM9koRhMUx16pyUmbOZu68EHSdBE7RHGSKuJd8FjNaA0F6uyQSu-r8XUH6_2tPZ9MQ-7UWlI/s640/blogger-image--411959050.jpg" /></a></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
そして、そのままカラチ泊。写真は、ホテルの朝食です。なかなか豪華なバイキング形式。早速、カレーです。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
翌日は、夕方の国内線でカラチからサッカルまで移動。双発のターボプロップ機(ATR42)で、飛行時間は1時間ちょっとなのですが、途中、モヘンジョ・ダーロ空港を経由するので、約2時間かかります。カラチ発が1時間弱遅れたので、離陸してすぐに日没となりました。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjmR5rBKGToZzgWnuTZE8_IDVm47zGCxywJONfC_mWcUC1nVH2mz19viUTy5JLKM5B5gOJk2s5uQ0zUmVZ7d0BGwK9h9zvBnQbDqHZilOOhbrGw2bzjT22fRIwjQMGYmrYW5164dVpGucdZ/s640/blogger-image-1243505037.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjmR5rBKGToZzgWnuTZE8_IDVm47zGCxywJONfC_mWcUC1nVH2mz19viUTy5JLKM5B5gOJk2s5uQ0zUmVZ7d0BGwK9h9zvBnQbDqHZilOOhbrGw2bzjT22fRIwjQMGYmrYW5164dVpGucdZ/s640/blogger-image-1243505037.jpg" /></a></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
写真は、サッカル空港に降り立った搭乗機。荷物もすべて無事到着。空港までマッラー教授に出迎えていただき、途中、教授のお兄さんの経営するレストランで夕食をとった後、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学のゲストハウスに投宿しました。ここは、エアコン、WiFi完備できわめて快適です。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
パキスタン全土は、先々週~先週(9月第1~2週)にかけて、モンスーン後半の集中降雨に見舞われ、一部で洪水や土砂災害の被害があったそうです。ハイルプール市内も、西~南を流れるミルワー運河が増水して一部の地区が冠水したとのこと。大学までの途上、車窓から、まだ冠水している畑や住宅街の中の空き地が見られました。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
依然として湿度が高く、曇り空ですが、もう雨は降らないようです。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
本日(9/17)は、セキュリティーの登録などもろもろの手続きと、マッラー、ヴィーサル両教授と調査の段取りについての打ち合わせです。フィールドへは、明後日(9/19)から出る予定です。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
引き続き、調査の進捗状況など、本ブログで報告しますので、期待してお待ちください。</div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com2Shah Abdul Latif University27.4895814 68.761701227.4754954 68.741960200000008 27.503667399999998 68.7814422tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-41443554402361314372012-09-08T07:00:00.000+09:002012-09-08T07:00:07.113+09:00南回りルートの考古学-分かっていること/分かっていないこと(4)<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
少々間が空いてしまいましたが、南回りルートの考古学について引き続き解説したいと思います。さて、前回は、考古学(石器技術)と化石人骨の組み合わせについて、2005年頃までに分かっていたことを模式的な編年表に整理してみました。ここにもう一つ、重要な出来事を付け加えておきたいと思います。およそ7.5~7.3万年前に起こった、トバ火山(現在のインドネシア北西部スマトラ島に所在)の新規大噴火(YTT: Younger Toba Tuff*)です。<span style="font-size: x-small;">*Toba Tephraと標記される場合もあります。</span><br />
<div>
<table border="1"><tbody>
<tr><td></td><td>アフリカ南部</td><td>アフリカ北部</td><td>レヴァント</td><td>アラビア</td><td>南アジア</td><td>東南アジア</td><td>オーストラリア</td></tr>
<tr><td>12万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="background-color: yellow; color: white; text-align: center;"></td><td style="text-align: center;">(未到達)</td></tr>
<tr><td>8万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: green; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="text-align: center;">(未到達)</td></tr>
<tr><td>7.3万年前*</td><td colspan="7" style="background-color: red; color: white; text-align: center;"><b>トバ火山大噴火</b>(YTT)</td></tr>
<tr><td>6万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: green; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="text-align: center;">(未到達)</td></tr>
<tr><td>4万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td></tr>
<tr><td>3万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td></td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td></tr>
</tbody></table>
<span style="background-color: white; color: #222222; font-family: Arial, Tahoma, Helvetica, FreeSans, sans-serif; line-height: 18px;"><span style="font-size: x-small;">*トバ火山新規大噴火の年代は、7.5~7.3万年前とされています。</span></span><br />
<div style="text-align: center;">
<iframe frameborder="0" height="350" marginheight="0" marginwidth="0" scrolling="no" src="https://maps.google.com/maps/ms?msa=0&msid=202802657388444427843.0004c906522d43cb2ccb4&hl=en&ie=UTF8&t=h&ll=5.090944,89.648438&spn=58.570905,74.707031&z=3&output=embed" width="425"></iframe><br /></div>
<div style="text-align: right;">
<small><a href="https://maps.google.com/maps/ms?msa=0&msid=202802657388444427843.0004c906522d43cb2ccb4&hl=en&ie=UTF8&t=h&ll=5.090944,89.648438&spn=58.570905,74.707031&z=3&source=embed" style="color: blue;" target="_blank">拡大表示</a>(Google Map、別窓)</small></div>
<br class="Apple-interchange-newline" /> Google mapにトバ火山と、新規大噴火の噴出物(火山灰)の検出地点を落としてみました。青は陸上の堆積物、黄色は海底コアからの検出です(位置は「だいたい」で、精確ではありません)。見ての通り、東は南シナ海から、西はパキスタン沖のアラビア海まで分布しています。インドのいくつかの地点では、一次的な降下火山灰層の厚い堆積(最大1m)が確認されています。さらに、グリーンランドの氷床コアでも、トバ火山の新規大噴火の年代に硫化物の濃度が急激に上昇することが知られており、噴火の影響によると考えられています。まさに人類が経験した中で最大規模の噴火だったのです<span style="font-size: x-small;">(こちらもご参照ください:高橋正樹「破局噴火」<a href="http://www2.jpgu.org/publication/jgl/JGL-Vol6-3.pdf" target="_blank">日本地球惑星科学連合ニュースレター(JGL)6-3</a>:3-6ページ)</span>。<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b1/Toba_zoom.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em; text-align: center;"><img border="0" height="240" src="http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b1/Toba_zoom.jpg" width="320" /></a></div>
</div>
<div style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;"><span style="background-color: white; color: #222222; font-family: Arial, Tahoma, Helvetica, FreeSans, sans-serif; line-height: 18px;">画像:現在のトバ・カルデラ(ランドサット画像)Wikimediaコモンズより(</span><a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Toba_zoom.jpg">http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Toba_zoom.jpg</a>)</span></div>
<div>
<span style="background-color: white; color: #222222; font-family: Arial, Tahoma, Helvetica, FreeSans, sans-serif; line-height: 18px;"><br /></span>
<span style="background-color: white; color: #222222; font-family: Arial, Tahoma, Helvetica, FreeSans, sans-serif; line-height: 18px;"> この巨大噴火が人類史に与えた影響を最初に論じたのは、S.H.アンブローズ(Ambrose)です。1998年の論文では、遺伝学が示唆していた同時期の現代人の急激な人口減少の可能性(ボトルネック)やアフリカにおける遺跡数の減少などを挙げて、トバ大噴火の影響で生じた急激な気候の悪化、すなわち「火山噴火の冬」が、現代人ホモ・サピエンスに大きな打撃を与えた可能性を指摘しました(</span><span style="color: #222222; font-family: Georgia, Times New Roman, serif; font-size: x-small;"><span style="line-height: 18px;">Ambrose, S. H.(1998) Late Pleistocene human population </span></span><span style="color: #222222; font-family: Georgia, 'Times New Roman', serif; font-size: x-small; line-height: 18px;">bottlenecks, volcanic winter, and </span><span style="color: #222222; font-family: Georgia, 'Times New Roman', serif; font-size: x-small; line-height: 18px;">differentiation of modern humans. Journal of Human Evolution,vol.34: 623-651)。</span><br />
<span style="background-color: white; color: #222222; font-family: Arial, Tahoma, Helvetica, FreeSans, sans-serif; line-height: 18px;"><br /></span>
<span style="background-color: white; color: #222222; font-family: Arial, Tahoma, Helvetica, FreeSans, sans-serif; line-height: 18px;">関連記事</span><br />
<ul style="background-color: white; color: #222222; font-family: Arial, Tahoma, Helvetica, FreeSans, sans-serif; line-height: 18px; margin: 0.5em 0px; padding: 0px 2.5em; text-align: left;">
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/810-200m.html" style="color: #888888; text-decoration: none;">現代人のグレートジャーニー-「南回りルート」とは?</a></li>
<li style="margin: 0px 0px 0.25em; padding: 0px;"><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/1.html" style="color: #888888; text-decoration: none;">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(1)</a></li>
<li style="margin: 0px 0px 0.25em; padding: 0px;"><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/2.html" style="color: #888888; text-decoration: none;">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(2)</a></li>
<li style="margin: 0px 0px 0.25em; padding: 0px;"><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/3.html" style="color: #888888; text-decoration: none;">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(3)</a></li>
</ul>
</div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0日本, 東京都府中市35.6689735 139.477661435.6173745 139.39869739999997 35.7205725 139.5566254tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-83539354495279648202012-09-01T22:20:00.000+09:002012-09-01T22:20:14.050+09:00速報・インダス考古学に関する国際会議<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<br />
<div class="MsoNormal" style="text-align: justify; text-justify: inter-ideograph;">
<span lang="EN-US" style="font-family: 'Times New Roman', serif; font-size: 12pt; line-height: 115%;"> 前回のポストから少々間が空いてしまいましたが、その間に、下記の国際会議の開催が決まりました。どこよりも早く、お知らせします。</span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: justify; text-justify: inter-ideograph;">
<b><span lang="EN-US" style="font-family: "Times New Roman","serif"; font-size: 12.0pt; line-height: 115%; mso-bidi-font-size: 11.0pt;"><br /></span></b></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: center;">
<b><span lang="EN-US" style="font-family: "Times New Roman","serif"; font-size: 12.0pt; line-height: 115%; mso-bidi-font-size: 11.0pt;">New
Horizons through novel discoveries in Indus civilization: International
Conference on Indus Archaeology.<o:p></o:p></span></b></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: center;">
<span style="font-size: x-small;"><span lang="EN-US" style="font-family: 'Times New Roman', serif; line-height: 115%;">(Held at Shah Abdul Latif University
Khairpur Sindh, Pakistan from February 12<sup>th</sup> 2013 to February 16<sup>th </sup>2013).
</span><span lang="EN-US" style="font-family: 'Times New Roman', serif; line-height: 115%;"><o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: center;">
<br /></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: center;">
<span style="font-family: inherit;"><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"><b>最新の発見にもとづくインダス文明研究の新展開-インダス考古学国際会議</b></span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"><o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: center;">
<span style="font-family: inherit;"><span style="font-size: x-small;"><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;">(2013</span><span style="line-height: 115%;">年</span><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;">2</span><span style="line-height: 115%;">月</span><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;">12</span><span style="line-height: 115%;">日~</span><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;">16</span><span style="line-height: 115%;">日、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学、ハイルプール、パキスタン)</span></span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"><o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: center;">
<span style="font-family: inherit; font-size: 12pt; line-height: 115%; text-align: justify;"><br /></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; line-height: 14px; text-align: justify;"> 会議のタイトルは「インダス文明」となっていますが、その中に「石器時代の考古学」というパネルが設けられ、旧石器~中石器時代を対象とした議論が行なわれることとなりました。このパネルは、プロジェクト・メンバーでもあるG.M.ヴィーサル教授と私(野口)がオーガナイザーとなります。インド、イギリス、アメリカ、スペインなどの研究者を招聘して、1)南アジアの前期~中期旧石器時代、2)南回りルートの現代人の拡散、3)更新性後半~完新世初頭の砂漠環境の変化と人類の適応、の3つのセッションを設ける予定で、現在、プログラムの調整を開始したところです。<br /> わたしたちのプロジェクト自体ははじまったばかりで、まだ議論に供することのできるデータは乏しいのですが、この機会に多くの研究者に遺跡や資料を見ていただき、今後の調査に向けて有意義な議論を深めるとともに、プロジェクトをひろく周知する機会になればと期待しています。</span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; line-height: 14px; text-align: justify;"> 今後、新たな情報が入り次第、ここで報告して行きたいと思います。</span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; line-height: 14px; text-align: justify;"> なお、本国際会議では、開催時に論文集も同時刊行される予定です。 </span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; line-height: 14px; text-align: justify;"><br /></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; line-height: 14px; text-align: justify;">(以下、趣旨説明)</span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; line-height: 14px; text-align: justify;"><span style="font-size: x-small;"> </span></span><span style="font-family: inherit; font-size: 12pt; line-height: 115%; text-align: justify;">インダス考古学は、探査、発掘を通じて収集される情報とともに、最新の手法による出土遺物や遺構の分析、解読によって加えられる知見により、つねに変化している。分析技術の進歩は、過去の生活をより具体的に解き明かし、社会や文化の多様性と地域性を、集団や行動のレベルで説明することを可能にした。その上で今、すべての新発見を一同に会し、一連の歴史として捉えること</span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; font-size: 12pt; line-height: 115%; text-align: justify;">必要とされています。今般の国際会議では、いくつかのパネルがそれぞれ異なるテーマに焦点を当て、研究の進展を明らかにします。</span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit;"><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"> 現在、パキスタンに属するインダス川流域は、西アジア、中央アジア、そして南アジアの交差点として、人類の出アフリカにおける重要な位置を占めていました。旧石器時代の人々がユーラシアを東へと進もうとしたとき、峻険なヒマラヤ山脈により可能なルートは南北に分割されます。そのうち南側のルートを辿った人びとは、必ずやパキスタンにその足跡を残したでしょう。人類拡散の痕跡は、研究者たちによりその文化的側面が詳細に説明されるでしょう。そして長きにわたる石器時代の最後に新石器時代の文化変化が起こり、都市文明へと続くのです。</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"><o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit;"><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"> 新たに発見、調査された都市遺跡は、非常に豊かな生活スタイルと文化的複雑さを明らかにしつつあります。長距離交易による商品は市場に蓄積されました。銅、宝石、海産の貝などは、テラコッタ、ファイアンス、装飾された宝石や金属製品などの工芸品とともに流通して文化の一部となるとともに、古代南アジアの都市からの訪問者を魅惑しただろう。交易従事者は、テラコッタもしくは金属製のパスポートを識別と認証のために与えられ、そこに刻まれた記号によりメッセージが確認されただろう。インダスの文化は、確実にある水準に達していたのである。今まさに、研究者たちはそれぞれの新たな発見を持ち寄り、共有し、議論するときである。それは、まだ解明されていないインダス文明の実態を明らかにするための重要な機会となるだろう。シャー·アブドゥル·ラティーフ大学の当局は、インダス考古学の進展に貢献するすべての研究者を歓迎します。</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"><o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit;"><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"> なお今般の会議は、</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">1)</span><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">石器時代の考古学、</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">2)</span><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">グジャラート、ラージャスターンの考古学、</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">3)</span><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">インダスの考古学、</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">4)</span><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">インダス文明後の考古学の</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">4</span><span style="font-size: 12pt; line-height: 115%;">つのパネルで構成される予定です。</span><span lang="EN-US" style="font-size: 12pt; line-height: 115%;"><o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit;"><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;"><br /></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span style="font-family: inherit;"><b><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;">(1) Archaeology of Stone Age, Organized
by <span style="font-size: small;"> </span></span><span class="blockname2"><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;">NOGUCHI
Atsushi</span></span><span class="blockemailwithname2"><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;"> </span></span></b><span lang="EN-US" style="line-height: 115%;"><b>and G.M. Vessar</b><o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="margin-bottom: 0.0001pt; text-align: left;">
<span style="font-family: inherit;"><span lang="EN-US">(2) Archaeology of Gujarat and Rajasthan;
organized by </span><span lang="EN-US">Prabodh Shirvalkar</span><span lang="EN-US"> </span><span lang="EN-US">and
Rajesh S.V.</span><span lang="EN-US"> <o:p></o:p></span></span></div>
<div class="MsoNormal" style="margin-bottom: 0.0001pt; text-align: left;">
<span style="font-family: inherit; line-height: 115%;">(3) Archaeology of Indus land Organized by Q.
H. Mallah and J.M. Kenoyer</span></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: left;">
<span lang="EN-US" style="line-height: 115%;"><span style="font-family: inherit;"><span style="font-size: small;">(4) Archaeology of Post Indus to onwards
organized by Mastoor Bukhari and Tasleem Abro.</span></span></span></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgHCEhdCpsYH3SWppozKkJnAizft7OGk3FNBNtNhsmgk8KKunFHheut36kH9Q3ERJGDCVaAsvWgBAFfXL4Axa3_DeQPqr_qtQDYGz6EMutPU50i9d7bjrYmurw94_suh92XZjNPU0JpHin6/s1600/IMGP5137.JPG" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="212" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgHCEhdCpsYH3SWppozKkJnAizft7OGk3FNBNtNhsmgk8KKunFHheut36kH9Q3ERJGDCVaAsvWgBAFfXL4Axa3_DeQPqr_qtQDYGz6EMutPU50i9d7bjrYmurw94_suh92XZjNPU0JpHin6/s320/IMGP5137.JPG" width="320" /></a></div>
<div class="MsoNormal" style="text-align: center;">
<span lang="EN-US" style="line-height: 115%;"><span style="font-family: inherit; font-size: x-small;">(写真は、今年2月に竣工したばかりのシャー・アブドゥル・ラティーフ大学の中央校舎。学長室や会議室など最新の設備があるので、たぶん国際会議はここで開催されるのではないかと。左は、Q.H.マッラー教授。国際会議開催の中心人物)</span></span></div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-56422699109260647682012-08-21T18:49:00.000+09:002012-08-22T19:54:54.595+09:00ラオスの洞窟遺跡で~4万6千年前の解剖学的現代人が出土(PNAS)<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
「南回りルートの考古学」シリーズの下書きが途中のまま、また新しいニュースです。<br />
東南アジアはラオスのタン・パ・リン(Tam Pa Ling)洞窟における、フランス・アメリカ・ラオス・オーストラリアの研究者からなるチームが、大陸部では最古級の現代人ホモ・サピエンスの化石を発掘したと、8/20付(日本時間では8/21)のアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)電子版に発表しました。原著論文はこちら:<span style="font-family: inherit;">F. Demeter, L. L. Shackelford et al. (2012) Anatomically modern human in Southeast Asia (Laos) by 46 ka, PNAS, <a href="http://www.pnas.org/content/early/2012/08/15/1208104109.abstract" target="_blank">doi: 10.1073/pnas.1208104109</a></span><span style="font-size: x-small;">(本文閲覧は有償またはログインが必要です)</span>。<br />
第2著者の所属するイリノイ大学の<a href="http://www.news.illinois.edu/news/12/0820skull_LauraShackelford.html">リリー</a><a href="http://www.news.illinois.edu/news/12/0820skull_LauraShackelford.html">ス</a><a href="http://www.news.illinois.edu/news/12/0820skull_LauraShackelford.html" target="_blank">(Lao skull earliest example of modern human fossil in Southeast Asia)</a>には出土した頭骨などの画像が掲載されています(下の写真)。また<a href="http://news.illinois.edu/slideshows/shackelford_skull/" target="_blank">スライドショー</a>で、遺跡の景観や発掘調査風景、層序や年代などを見ることができます。ぜひご覧ください<span style="font-size: x-small;">(なお原著論文のSupporting Informationにも同じものが掲載されています。PDF版、閲覧・ダウンロードはフリー)</span>。<br />
洞窟内の写真を見ると、最奥部が急激に落ち込んでいて、その部分の表層から2.35m掘り下げたところから人骨が出土しているようです。トレンチは、ほとんど縦坑の様相です。<br />
年代は、人骨出土位置の上下の堆積物の14CおよびOSL年代測定から、5.1~4.6万年前、骨自体のウラン・シリーズ法による測定値は最大6.3万年前ということです。新しい方の年代でも、これまで東南アジア最古だった、マレーシア・ニアー(Niah)洞窟下層と匹敵するかそれよりも古くなる可能性がありますし、古い方の年代は、調査者らが強調しているように、遺伝学的に推計されている南アジア・東南アジアへのホモ・サピエンスの進出年代にほぼ重なる数値です。しかも、中国南部に近く東アジアへのサピエンスの進出を考える上でも重要な場所ですね。<br />
しかし洞窟の写真を見ている限りでは、居住遺跡とは思えないですね。どのような石器を使い、どのような生活をしていたのか、それが分かるような資料は出土しているのでしょうか。<br />
<br />
ちなみにこの遺跡、昨年11~12月に国立科学博物館で開催された国際シンポジウム「<a href="http://www.kahaku.go.jp/event/2011/06sympo/">旧石器時代のアジアにおける現代人的行動の出現と多様性</a>」でも発表されていましたね。その時はまだ、今回人骨が出土した深度まで到達していなかったと思います。シンポの後、またフィールド調査だとおっしゃっていたので、まさにその時に出土したのでしょうか?<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://www.news.illinois.edu/WebsandThumbs/shackelford,laura/Figure-10_x.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="163" src="http://www.news.illinois.edu/WebsandThumbs/shackelford,laura/Figure-10_x.jpg" width="320" /></a></div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-68023369896316929172012-08-18T10:00:00.000+09:002012-08-18T10:00:02.367+09:00インド考古研究NEWS<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
先般刊行された『インド考古研究』33号に、2012年春季調査の概要がNEWSとして掲載されました。<br />
<br />
<ul style="text-align: left;">
<li>野口 淳・小茄子川歩 (2012) PJAM/パキスタン-日本考古学共同調査2012-1 ヴィーサル・ヴァレー地区旧石器時代遺跡群予備調査・インダス式印章資料調査.<b>インド考古研究</b>,33:74-79.インド考古研究会(神奈川・平塚)</li>
</ul>
<span style="font-weight: normal; line-height: 19px;"><span style="font-weight: normal; line-height: 19px;"> </span></span>『インド考古研究』(ISSN0910-0326)は、<a href="http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~inkoken/" target="_blank">インド考古研究会</a>が編集・発行している、日本唯一の南アジア考古学・美術史の専門誌です。今回、研究会のご好意でPDFファイルを提供していただきましたので、ウェブ・サイトの<a href="https://sites.google.com/site/veesarvalley/home/resource_jp" target="_blank">ダウンロード・ページ</a>にアップロードしました。よろしければ、ご覧下さい。<br />
<br />
なお『インド考古研究』の同じ号には、プロジェクト・メンバーでもあるカシード・マッラー、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学(SALU)教授らによる、最近のシンド州北部における考古学調査の動向に関する論文(英文)も掲載されています。<br />
<br />
<ul style="text-align: left;">
<li>Q. H. Mallah, N. Shaikh, G. M. Veear, H. Kondo & T. Abro (2012) An Overview o the Recent Archaeological Research in Northern Sindh, Pakistan. <i>Indo-Kōko-Kenkyū (Studies in South Asian Art and Archaeology)</i>, 33: 19-38.</li>
</ul>
<br />
<div style="text-align: left;">
</div>
ヴィーサル・ヴァレー地区を含む旧石器時代の遺跡から、インダス文明期の都市遺跡ラカンジョ・ダーロ(Lakhan Jo Daro)、タール砂漠で発見されている先文明~文明期についても紹介されています。興味のある方は、<a href="http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~inkoken/" target="_blank">インド考古研究会</a>までお問い合わせください。また<a href="http://www.book61.co.jp/" target="_blank">六一書房</a>さんからも購入できると思います(8/17現在、最新刊についてはHP未掲載)。<br />
<br />
ヴィーサル・ヴァレー地区の予備調査の成果と見通しについては、すでに日本旧石器学会の会誌、『旧石器研究』に投稿、掲載されています。『旧石器研究』については、<a href="http://palaeolithic.jp/index.htm" target="_blank">日本旧石器学会</a>にお問い合わせいただくか、また<a href="http://www.book61.co.jp/" target="_blank">六一書房</a>さんからも購入できると思います(8/17現在、最新刊についてはHP未掲載)。<br />
<br />
<ul style="text-align: left;">
<li><span style="line-height: 19px;">野口 淳・G.M.ヴィーサル・Q.H.マッラー・N.シェイフ・近藤英夫 (2012) パキスタン・イスラム共和国シンド州ヴィーサル・ヴァレー地区の中期・後期旧石器時代資料. </span><span style="line-height: 19px;">旧石器研究</span><span style="line-height: 19px;">, 8:169-179.日本旧石器学会(東京).</span></li>
</ul>
<span style="line-height: 19px;"> 上掲論文を含め、プロジェクトの成果に関する発表資料等についてはウェブ・サイトの<a href="http://palaeolithic.jp/index.htm" target="_blank">資料庫ページ</a>に掲載していきます。ご参照下さい。</span><br /><span style="line-height: 19px;"> また現地における調査の経過などは、追って本ブログやウェブ・サイトで紹介したいと思います。砂漠における旧石器遺跡の調査の様子など、ご期待ください。</span><br /><span style="line-height: 19px;"> 最後に、2012年春季調査の参加メンバー(一部)の写真です。写真中央の筆者(野口)を挟んで、左がG.M.ヴィーサル教授(SALU考古学研究室、考古学・人類学博物館長)、右がQ.H.マッラー教授(SALU考古学研究室主任)です。2012年2月23日撮影。</span>
<br />
<h4>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjJc67_63HYHqF6DTXSGGqo2wHZ6KMm-_Yw6tB6NjU-LwsPO6gy4ceNHRe8X5CvR-6oYEd-wSuwDX1nxMLhZx9ncCRZG4E5zyAN0VXFohpCkuFEWcGkDE5_ETsJdzd83CJDeMFKEUXUAs-z/s1600/resize1032.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="240" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjJc67_63HYHqF6DTXSGGqo2wHZ6KMm-_Yw6tB6NjU-LwsPO6gy4ceNHRe8X5CvR-6oYEd-wSuwDX1nxMLhZx9ncCRZG4E5zyAN0VXFohpCkuFEWcGkDE5_ETsJdzd83CJDeMFKEUXUAs-z/s320/resize1032.jpg" width="320" /></a></div>
<div style="text-align: left;">
<span style="font-weight: normal; line-height: 19px;"> みな、それなりに着込んでいますが、日中は20~25℃くらい、そして遮るものがないのでペットボトルを日向に置きっ放しにしておくと30分で60℃のお湯になるくらいでした。さて、9月後半に予定している夏季調査は、いったいどうなるのでしょうか?</span></div>
</h4>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-28790136921981019312012-08-17T09:42:00.001+09:002012-08-17T09:42:43.956+09:00お知らせ設定ミスでログインしないとコメントを書き込めないようになっていました。設定を変更しましたので、是非コメントを(^_^)Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-34001789460506558472012-08-16T10:00:00.000+09:002012-08-21T18:19:59.261+09:00南回りルートの考古学-分かっていること/分かっていないこと(3)<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
南アジアの旧石器時代研究は、19世紀にはじまる長い歴史を持つ一方で、ヨーロッパ、西アジアを基準として組み立てられてきた枠組みとあわない部分が多く、編年、時代区分、年代といった基本的な部分についての論争がいまだに続いています。<br />
<div>
現代人ホモ・サピエンスの出現に関わる中期/後期旧石器時代に関しては、まず、典型的な(=ヨーロッパ、西アジアと共通すると言う意味での)中期旧石器時代が捉えられていませんでした。また後期旧石器時代についても、やはりヨーロッパ、西アジア的な石刃石器群が見つかっていません。代わりに、新しい細石器(幾何形細石器、日本で言うところのナイフ形石器に共通した特徴をもつ)が2万5千年前頃から出現し、氷河時代が終わった後も続くということが分かっていました。</div>
<div>
ところがその後、スリランカのファ・ヒエン洞窟(Fa Hien Cave)で、現代人ホモ・サピエンスの人骨と一緒に出土した細石器が3万2千年前まで遡ることが<sup>14</sup>C年代測定により明らかとなりました。同じ頃、南アフリカではハウィソンズ・プールト(Howiesons Poort)文化の細石器が従来考えられていたよりもはるかに古く、8~7万年前まで遡ることが明らかとなっており、またヨーロッパ南部などでは後期旧石器時代の初頭(4~3.5万年前)に細石器が現われることから、現代人ホモ・サピエンスの登場の示標として注目されるようになっていました。<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://www.pnas.org/content/103/25/9381/F4.large.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="320" src="http://www.pnas.org/content/103/25/9381/F4.large.jpg" width="249" /></a></div>
<br />
<div style="text-align: right;">
<span style="font-size: x-small;">画像:南アフリカ、ハウィソンズ・プールト(Howiesons Poort)文化の幾何形細石器(クラシエス川遺跡:Krasies River)、<a href="http://www.pnas.org/content/103/25/9381.abstract" rel="nofollow" style="color: rgb(139, 0, 0) !important;" target="_blank">Mellars (2006) <i>PNAS</i> vol.103</a>, fig.4.</span></div>
<div style="text-align: left;">
<div style="text-align: left;">
しかもスリランカの遺跡や、それ以前に発掘されていたインド中部のパトネ(Patne:2.5万年前)遺跡では、ダチョウの卵殻や石製のビーズ、前回画像を紹介した南アフリカの線刻赤土とよく似た異物なども出土していました。これらに注目した、イギリスのマイケル・ペトラグリアらは、一連の資料を南アジアにおける現代人の出現を示すものであるという論文を2005年に発表しました<span style="font-size: x-small;">(<a href="http://www.jstor.org/discover/10.1086/444365?uid=3738328&uid=2134&uid=2&uid=70&uid=4&sid=21101146468717" target="_blank">James, H.V.A. & Petraglia, M.D. (2005) Modern human origins and the evolution of behavior in the later Pleistocene record of South Asia. <i>Current Anthropology</i>, 46: S3-S27</a>:JSTOR、論文の閲覧にはログインが必要)</span></div>
</div>
</div>
</div>
</div>
<span style="background-color: white; font-family: 'Lucida Grande', 'Lucida Sans Unicode', Verdana, sans-serif;">。また現代人の世界への広がりについての大家にして「南回りルート」の強力な支持者でもあるイギリスのポール・メラーズは、この発見が、アフリカから南アジア、そしてオーストラリアをつなぐものであると論評しました</span><span style="font-size: x-small;">(<a href="http://www.sciencemag.org/content/313/5788/796" target="_blank">Mellars, P. (2005) Going East. <i>Science</i>, 313<span style="background-color: white; font-family: 'Lucida Grande', 'Lucida Sans Unicode', Verdana, sans-serif;">: 796-800</span></a>:本文閲覧は有償またはログインが必要</span>)。<br />
簡潔に模式化すると、以下のとおりです。<br />
<br />
<table border="1"><tbody>
<tr><td></td><td>アフリカ南部</td><td>アフリカ北部</td><td>レヴァント</td><td>アラビア</td><td>南アジア</td><td>東南アジア</td><td>オーストラリア</td></tr>
<tr><td>12万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ*</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="background-color: yellow; color: white; text-align: center;"></td><td style="text-align: center;">(未到達)</td></tr>
<tr><td>8万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: green; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="text-align: center;">(未到達)</td></tr>
<tr><td>6万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ*</td><td style="background-color: green; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="text-align: center;">(未到達)</td></tr>
<tr><td>4万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td></td><td style="color: white; text-align: center;"></td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td></tr>
<tr><td>3万年前</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">ルヴァロワ</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td></td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">石刃<br />
細石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td><td style="background-color: blue; color: white; text-align: center;">不定形石器</td></tr>
</tbody></table>
<span style="font-size: x-small;">*ルヴァロワというのは、ヨーロッパ~西アジア~北アフリカの中期旧石器時代に特徴的な石器づくりの技術です。詳しくは、次回以降に解説する予定です</span></div>
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<span style="font-size: x-small;">**表の枠の背景色は化石人骨の違いを示します。青:現代人、緑:ネアンデルタール人、黄色:原人(ホモ・エレクトゥス)</span></div>
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<br /></div>
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
さて、この時点ではレヴァント(西アジア地中海沿岸)より東側の不連続が目立ちますね。ただしそれは、情報の不足によるものでした。「南回りルート」がにわかに注目を集めたのは、その空白部分をいかにして埋めるかということへの期待からです。</div>
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
そして実際に、アラビア半島からインド、東南アジアの各地で発掘調査が盛んに行なわれるように成りました。</div>
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
果たして、その結果は...(続く)<br />
<br />
<br />
関連記事<br />
<br />
<ul>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/810-200m.html">現代人のグレートジャーニー-「南回りルート」とは?</a></li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/1.html">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(1)</a></li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/2.html">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(2)</a></li>
</ul>
</div>
</div>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0日本, 東京都府中市35.6689735 139.477661435.6173745 139.39869739999997 35.7205725 139.5566254tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-70252102759138937802012-08-15T10:28:00.000+09:002012-08-16T10:34:38.193+09:00ネアンデルタールとホモ・サピエンスの悩ましい関係<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on"><div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on"><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="http://www.pasthorizonspr.com/wp-content/uploads/2012/08/HomoNean.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="178" src="http://www.pasthorizonspr.com/wp-content/uploads/2012/08/HomoNean.jpg" width="400" /></a></div><div style="text-align: right;"><span style="font-size: x-small;">画像:ネアンデルタール(左:フランス、ラ・シャペル・オー・サン洞窟)とホモ・サピエンス(右:イスラエル、スフール洞窟)の頭骨、<a href="http://www.pasthorizonspr.com/index.php/archives/08/2012/doubts-about-whether-modern-humans-and-neanderthals-interbred" target="_blank">PastHorizonsの記事</a>より.ソース:Wikimedia commons 左: <a href="http://en.wikipedia.org/wiki/File:Homo_sapiens_neanderthalensis.jpg">http://en.wikipedia.org/wiki/File:Homo_sapiens_neanderthalensis.jpg</a>,右: <a href="http://en.wikipedia.org/wiki/File:Skhul.JPG">http://en.wikipedia.org/wiki/File:Skhul.JPG</a>)</span></div><br />
<div style="text-align: left;"> 引き続き「南回りルート」の考古学について解説を用意していたのですが、またまたニュースが飛び込んできました。アメリカ科学アカデミー紀要(The Proceedings of National Academy of Sciences: PNAS)の電子版に8/14付で、現代人ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の交配関係を見直すという趣旨の論文が掲載されました<span style="font-size: x-small;">(<span style="font-family: inherit;"><a href="http://www.blogger.com/goog_1532153839"></a></span></span></div><br />
<li class="contributor" id="contrib-1" itemprop="author" itemscope="itemscope" itemtype="http://schema.org/Person" style="border: 0px; display: inline; font-style: inherit; line-height: 1.7; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: left; vertical-align: baseline;"><span style="font-size: x-small;"><span style="font-family: inherit;"><a href="http://www.blogger.com/goog_1532153839">Eriksson, </a></span></span></li><li class="contributor" id="contrib-1" itemprop="author" itemscope="itemscope" itemtype="http://schema.org/Person" style="border: 0px; display: inline; font-style: inherit; line-height: 1.7; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: left; vertical-align: baseline;"><span style="font-size: x-small;"><span style="font-family: inherit;"><a href="http://www.blogger.com/goog_1532153839"><span class="name" itemprop="name" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">A.</span></a></span></span></li><li class="contributor" itemprop="author" itemscope="itemscope" itemtype="http://schema.org/Person" style="border: 0px; display: inline; font-style: inherit; line-height: 1.7; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: left; vertical-align: baseline;"><span style="font-size: x-small;"><span style="font-family: inherit;"><a href="http://www.blogger.com/goog_1532153839"> & </a></span></span></li><li class="last" id="contrib-2" style="border: 0px; display: inline; font-style: inherit; line-height: 1.7; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: left; vertical-align: baseline;"><span style="font-size: x-small;"><span style="font-family: inherit;"><a href="http://www.blogger.com/goog_1532153839"><span class="name" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">A. Manica (2012) </span></a></span></span></li><span style="font-size: x-small;"><span style="font-family: inherit;"><a href="http://www.blogger.com/goog_1532153839"><span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">Effect</span> <span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">of</span> <span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">ancient</span> <span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">population</span> <span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">structure</span> on the degree <span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">of</span> polymorphism shared between modern human <span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">population</span>s and<span class="search-term-highlight" style="border: 0px; font-style: inherit; line-height: inherit; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; text-align: inherit; vertical-align: baseline;">ancient</span> hominins. PNAS, <span style="background-color: white; line-height: 9px;">doi:</span></a></span><span class="slug-doi" style="background-color: white; border: 0px; line-height: 9px; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; vertical-align: baseline;" title="10.1073/pnas.1200567109"><span style="font-family: inherit;"><a href="http://10.0.4.49/pnas.1200567109">10.1073/pnas.1200567109</a></span><span style="font-family: Lucida Grande, Lucida Sans Unicode, Tahoma, Verdana, Arial, Helvetica, sans-serif;">)*英文、本文の閲覧は有償またはログインが必要</span></span></span><span class="slug-doi" style="background-color: white; border: 0px; color: #333300; font-family: 'Lucida Grande', 'Lucida Sans Unicode', Tahoma, Verdana, Arial, Helvetica, sans-serif; line-height: 9px; margin: 0px; outline-style: none; padding: 0px; vertical-align: baseline;" title="10.1073/pnas.1200567109"><span style="font-size: x-small;">。</span></span><br />
現代人とネアンデルタール人の関係は、後者の化石人骨から抽出されたDNAの解析によって、いったんはまったく別の系統であり交配はなかったとされたのですが、その後、DNAの部分ではなく全体が解析されるに至って、両者の間に1~4%の共通する遺伝子があることが明らかになりました。そして、遺伝子の共有が現代人の誕生地であるアフリカの集団には見られず、アフリカ以外の集団には見られることから、先に分化した現代人とネアンデルタール人が、現代人の出アフリカ後に再び遭遇して交配したことにより、遺伝子の一部を再共有するに至った、という交配説が示されました。わずか2年前のことです。<br />
考古学的には、西アジアや北アフリカでは、ネアンデルタール人と現代人がそれぞれ作った石器が良く似ていることや、現代人がヨーロッパに進出した4~3万年前、共存していたネアンデルタール人の石器や装身具に変化が起こって現代人の技術を取り入れているように見えることなどが以前から指摘されていたので、交配説は急速に受け入れられたように見えました。<br />
一方で、両者に共通する遺伝子が、後の交配によるものではなく、共通祖先からそれぞれが受け継いだものなのではないか、という疑問、批判もあったようです。<br />
今回の論文は、まさにこの部分を指摘したもので、専門外の私には細かな数式、統計や遺伝学の原理を解説することはできませんが、アフリカ以外の現代人とネアンデルタール人との間の遺伝子の共有は、人口の構造や移動によって説明できるということのようです。<br />
いずれにしても、この論文が決定打と言うわけではなく、ネアンデルタール人と現代人との関係をめぐる議論は、まだしばらく決着がつかないのではないか、という状況でしょう。<br />
<br />
それにしても、この記事をみて思うのは、いっときブームを起こしたJ.ダーントンのエンターテイメント小説です。スピルバーグ監督で映画化が構想されるも、中央アジアの山中に生き残っていたネアンデルタール人と、主人公の助成人類学者の間にロマンスが...というくだりがその後の遺伝的関係の否定によって成り立たなくなったために映画化はお流れになった、という都市伝説?を聞いたことがあるのですが、研究が進むたびに、2人の関係は揺れ動き続けるようですね。<br />
さて、決着はいかに?<br />
<br />
</div><div style="text-align: center;"><iframe frameborder="0" marginheight="0" marginwidth="0" scrolling="no" src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=asiansophia-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=4789711412" style="height: 240px; width: 120px;"></iframe></div></div>Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0日本, 東京都府中市35.6689735 139.477661435.6173745 139.39869739999997 35.7205725 139.5566254tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-412496268573609452012-08-14T18:00:00.000+09:002012-08-21T18:17:55.340+09:00南回りルートの考古学-分かっていること/分かっていないこと(2)<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
それでは、一筋縄ではいかない、と予告した考古学資料について、少し解説しましょう。<br />
少し前までの教科書や概説書は、きわめてシンプルでした。だいたい、以下のようになっていたと思います(上から下に向かって新しくなります)。<br />
<br />
・前期旧石器時代-礫石器・石核石器-原人<br />
・中期旧石器時代-剥片石器 -旧人<br />
・後期旧石器時代-石刃石器・細石器-新人<br />
これらの旧石器時代は、いまから1万年以上前の氷河時代に、いまでは絶滅してしまった動物(マンモスや毛サイ、オオツノジカなど)と人類が共存していた時代です。そして、骨角器や洞窟壁画、マンモスの牙製のヴィーナス像などの発達した技術や芸術は、後期旧石器時代=新人の時代に出現したと考えられています。<br />
その後、1万年前以降、西アジアで土器の使用や農耕がはじまって、磨製石器を使う新石器時代になりました。<br />
<br />
しかしながら...現在、この解説には変更が必要です。もともと、この解説はヨーロッパと西アジアを中心に組み立てられたものでした。このため、2つの地域では大きな変更は必要とされていません(年代については、年代測定法の進歩とともに書き換えられていますが)。<br />
一方で、アフリカやアジアなど世界各地で調査が進むにつれて、この枠組みでは説明がつかないことが多数発見されたのです。<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/09/BBC-artefacts.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="202" src="http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/09/BBC-artefacts.jpg" width="320" /></a></div>
<div style="text-align: left;">
<span style="font-size: x-small;">画像:南アフリカ・ブロンボス洞窟出土の骨角器(手前),線刻のある赤土塊(中央:最古の芸術品),石器,8~7.5万年前,出典:Wikimedia commons (<a href="http://en.wikipedia.org/wiki/File:BBC-artefacts.jpg">http://en.wikipedia.org/wiki/File:BBC-artefacts.jpg</a>) *英語版のみ</span></div>
<br />
ところが、アフリカでも北側(エジプトやエチオピアなど)では、同じく12~8万年前には現代人ホモ・サピエンスが現われているのですが、彼ら/彼女らは、従来中期旧石器時代のものとされてきた石器を作っていたようです。さらに西アジアでも...12万年前に現われ、その後に消えてしまった現代人ホモ・サピエンスと、その後に現われたネアンデルタール人が作った石器の間には、多少の違いはあるのですが、全体として中期旧石器時代の技術で作られています。<br />
したがって、人骨化石が出土しなかった場合、石器だけから、その製作者が現代人なのかネアンデルタール人なのかを見分けるのはとても難しい状況です。ちなみに、西アジアで石器に大きな変化があらわれるのは、4~3万年前、つまり後期旧石器時代のはじまりの時です。<br />
<br />
そして西アジアより東側、南アジアや東南アジア、オーストラリアなどではもっと状況は複雑です。<br />
南アジアでは、西アジアやアフリカと共通する後期旧石器時代的な石器(細石器)や骨角器、ビーズなどの装身具が4~3万年前以降、現代人ホモ・サピエンスの人骨化石とともに出現します。<br />
東南アジアやオーストラリアでは、5~4万年前以降、現代人ホモ・サピエンスの人骨化石が出現しますが、骨角器やビーズはまだ見つかっていません。作られた石器は、アフリカ、西アジア、南アジアなどの後期旧石器時代の石器とはまったく似ていません。<br />
<br />
もう一度整理しましょう。<br />
遺伝学の成果によると、現代人ホモ・サピエンスは12~8万年前にアフリカを旅立ち、「南回りルート」で6~5万年前ころには南アジアに到達して人口を増やし、アジアやオーストラリアまで広がったということになります。<br />
人類学の成果によると、確実な現代人ホモ・サピエンスの化石人骨は、5~4万年前以降、南アジア、東南アジア、オーストラリアに現われます。<br />
考古学の成果によると、アフリカや西アジアと共通する後期旧石器時代的な石器・骨角器・装身具は4~3万年前に南アジアに現われますが、東南アジアやオーストラリアでは見つかっていません。<br />
<br />
もっとも確実なのは化石人骨を発見し、可能ならばそこからDNAを抽出して遺伝学の成果と比較することです。しかし、人骨が見つからなければ考古学の成果に頼るしかありません。しかし北アフリカや西アジアの例を見ても分かるとおり、現代人ホモ・サピエンスの出現は、かならずしも石器などの技術の変化とは一致しないようです。<br />
そこで、上記のような分野ごとの食い違いを乗り越えるために、いっそうの発掘調査が必要とされているのです。人類進化と現代人のグレート・ジャーニーへの考古学の貢献とは...世界各地で地道な発掘調査を続け、いつ・どこに・どのような考古資料(石器やほかの遺物)があるかを整理することです。考古学では、これを「編年」と呼びます。<br />
編年が整ったところで、化石人骨や遺伝学の成果をそこに重ね合わせれば、考古学上のどのような変化が、人類学や遺伝学が見出した変化と関連するのかどうかが分かるでしょう。考古学者が取り組むのは、このような研究なのです。<br />
<br />
次回は、南アジアと、そこに至る南回りルート上での考古学的発見について紹介しましょう。<br />
<br />
<br />
関連記事<br />
<br />
<ul>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/810-200m.html">現代人のグレートジャーニー-「南回りルート」とは?</a></li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/1.html">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(1)</a></li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/3.html">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(3)</a></li>
</ul>
</div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0日本, 東京都府中市35.6689735 139.477661435.6173745 139.39869739999997 35.7205725 139.5566254tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-2928753188822992102012-08-13T10:00:00.000+09:002012-08-21T18:16:56.125+09:00南回りルートの考古学-分かっていること/分かっていないこと(1)<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
前回は、現代人のグレート・ジャーニーにおける「南回りルート」について、概要を記しました。繰り返しに成りますが、現代人ホモ・サピエンスが世界各地へ広がっていったルートについて、現在、もっとも注目されているのが「南回りルート」です。<br />
たとえば、S.オッペンハイマー著『人類の足跡10万年全史』という本の中では、かなり具体的に年代とルートが記されています。いわく、8万5千年前にアフリカの外へと旅立った現代人は、アラビア半島を経由して南アジアへ到達し、そこから世界各地へとさらに広がっていった。たとえばあるグループは、(現在のパキスタン・シンド州~パンジャーブ州の)インダス平原から北上して中央アジアやヨーロッパ方面へ向かった...云々とあります。</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4794216254/ref=as_li_ss_il?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4794216254&linkCode=as2&tag=asiansophia-22" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="http://ws.assoc-amazon.jp/widgets/q?_encoding=UTF8&ASIN=4794216254&Format=_SL160_&ID=AsinImage&MarketPlace=JP&ServiceVersion=20070822&WS=1&tag=asiansophia-22" /></a></div>
<img alt="" border="0" height="1" src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=asiansophia-22&l=as2&o=9&a=4794216254" style="border: none !important; margin: 0px !important;" width="1" /> では、実際のところ、このストーリーはどの程度、実証されているのでしょうか?<br />
まずはじめに、この本に限らず、「南回りルート」は基本的に遺伝学の研究成果として提起されていることに注意しておかなければなりません。肝心の化石人骨は、現在(2012年8月)までのところ、すべて5~4万年前より後のものが、ルートの後半にあたるスリランカ、マレーシアのボルネオ島、オーストラリアで見つかっているだけです。8万5千年前~5万年前の、アラビア半島から南アジア(インド・パキスタン)にかけての地域では、まだ化石人骨が見つかっていません。<br />
このため、具体的にどのような人類、集団が、いつ、どこにいたのかを、実際の資料から確かめるには至っていないのです。<br />
もちろん、多くの研究者が、その時代の化石人骨を探し続けています。わたしたちもあわよくば...と夢見たりもするのですが、一般的に熱帯地域は人骨が残りづらい環境条件下にあります。洞窟遺跡や、何らかの理由で急速に埋まった遺跡、しっかりとした埋葬の跡などが見つかればよいのですが、なかなか見つかりません。<br />
はっきりとした理由はまだ分かりませんが、南アジア~東南アジアにかけての地域では、現代人以前、すなわち中期旧石器時代以前に遡る洞窟遺跡の数はきわめて少ないのです。地形や気候の条件と、人類の暮らし方、住まい方が、より緯度が高く冷涼な地域と異なっていたのかもしれません。<br />
ということで、次善の策として、というよりほかに手がかりがないので、考古学資料、つまり遺跡とそこに残された遺物-この時代の場合はほとんど石器です-が重要になってくるわけです。しかしながら、こちらもまた一筋縄にはいかないわけで...<br />
続きは、また次回。お楽しみに。<br />
<br />
関連する内容について、<a href="https://sites.google.com/site/veesarvalley/subject_jp/sainarch_jp" target="_blank">ウェブサイト</a>でも解説しています。<br />
また、以下の関連書籍もご参照ください。<br />
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関連記事<br />
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<ul style="text-align: left;">
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/810-200m.html">現代人のグレートジャーニー-「南回りルート」とは?</a></li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/2.html">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(2)</a></li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/3.html">「南回りルート」の考古学-分かっていること/分かっていないこと(3)</a>
</li>
</ul>
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<iframe frameborder="0" marginheight="0" marginwidth="0" scrolling="no" src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=asiansophia-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=4140910283" style="height: 240px; width: 120px;"></iframe><iframe frameborder="0" marginheight="0" marginwidth="0" scrolling="no" src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=asiansophia-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=4022599863" style="height: 240px; width: 120px;"></iframe></div>
Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-9931708532387053222012-08-12T10:00:00.000+09:002012-08-21T18:08:23.648+09:00現代人のグレート・ジャーニー-「南回りルート」とは?<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgxNC29LO7qRVJL7E0SdcJ1BabcmBsncIrOEs8zQy3HjnzEectklpCc-UsgrUd3NYC73waljHIoYFuZajKZ59V3hJMV6t_uha5CLrM_B8-FY3PJNPYiaU5iLmDs2K66WEeGEPId8BPgA1yX/s1600/project2k12%231-2.gif" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="240" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgxNC29LO7qRVJL7E0SdcJ1BabcmBsncIrOEs8zQy3HjnzEectklpCc-UsgrUd3NYC73waljHIoYFuZajKZ59V3hJMV6t_uha5CLrM_B8-FY3PJNPYiaU5iLmDs2K66WEeGEPId8BPgA1yX/s320/project2k12%231-2.gif" width="320" /></a></div>
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さて、前々回(8/10)のポストでは、ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトの目的が、アフリカに誕生した現代人ホモ・サピエンスが、世界各地へと広がっていく「グレート・ジャーニー」の足跡を解明することにある、と締めくくりました。<br />
しかし、何故パキスタンなのか? ということについては、なかなかピンとこない方が多いと思います。しかし、人類学、考古学の分野では、今、パキスタンを含めた南アジアが大いに注目されているのです。<br />
それは、現代人が世界各地へ広まっていく過程で、「南回りルート」が重要な役割を果たしたと考えられているからです。<br />
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現在、アフリカとアジアとの間は、エジプト北東部のスエズ半島から、イスラエル、パレスチナといった西アジアの地中海岸へと抜ける狭い連絡路があるのみです。そして、世界的に海面が大きく低下した氷河時代(最大でマイナス200m近く低下した)でも、状況は変わりませんでした。<br />
それならば、現代人ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界へ広がっていったルートも、ここに決まりじゃないか? と考えたくなるところですが...<br />
確かに、イスラエルの遺跡(スフール洞窟)では、アフリカ大陸の外では最古の、現代人の人骨化石が発掘されています(約12万年前)。ところが、一帯は8万年前以降、おそらくヨーロッパからなんかしてきたと考えられるネアンデルタール人の居住地となります。また、アジア、ヨーロッパでは、4万年前より古い現代人の人骨は見つかっていません。<br />
このことから、12万年前に西アジア沿岸地方(レヴァント地方とも呼ばれます)に進出した現代人は、そこから先へ進むことはできずに、滅びたかアフリカへ戻ってしまったのではないかと考えられるようになりました。<br />
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一方、それとは別に、遺伝学の研究が進むと、アフリカ以外の世界各地の集団が、アフリカの集団から分岐したのは8~6万年前ころではないか、と計算されるようになりました。ところが、肝心の時代(8~6万年前)、アフリカと陸続きだった西アジア沿岸、レヴァント地方はネアンデルタール人が暮らしていました。同じ時代の現代人の化石は見つかっていません。<br />
ということで、レヴァント地方は出アフリカ(アウト・オブ・アフリカ)のルートとは考え難いだろう、ということになりました。それでは、いったい?<br />
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そこで注目されたのが、東アフリカから、紅海を越えてアラビア半島に至る「南回りルート」です。ここには、バーブ・エル・マンデブ海峡があって、氷河時代でも20~30kmの海を越えなければならいルートだったようですが、しかしここが有力視されるには、2つの理由がありました。<br />
1つめは、オーストラリア最古の現代人化石の年代が5万年前まで遡ることが明らかになったこと。そしてもう1つは、アフリカ以外の世界各地の集団の遺伝学的な故郷のひとつが南アジアではないかと推測されたことです。<br />
こうして、8~6万年前にアフリカを出た現代人は、「南回りルート」を経て、わずか1~3万年くらいの間にオーストラリアにまで至った、また南アジアで人口増加が起こってそこから世界各地へと分散していったとする学説が提起されたのです。とくに、海岸沿いのルートこそがもっとも移動しやすく、短期間に現代人が広まっていったのだということを強調する研究者は「沿岸特急:coastal express」という用語を使うこともあります。<br />
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さて、これで察しの良い方はお気づきになったでしょう。<br />
そうです、わたしたちの調査地、パキスタン・シンド州は、その「南回りルート」の途上、それも海岸よりにあるのです。<br />
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現代人の出アフリカについては、<a href="https://sites.google.com/site/veesarvalley/subject_jp/sapal_jp" target="_blank">ウェブ・サイト</a>でも解説しています。<br />
また関連して、以下の書籍などもご参照ください。<br />
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関連記事<br />
<ul style="text-align: left;">
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/1.html">南回りルートの考古学-分かっていること/分かっていないこと(1)</a></li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/2.html">南回りルートの考古学-分かっていること/分かっていないこと(2)</a>
</li>
<li><a href="http://veesarvalleyjp.blogspot.jp/2012/08/3.html">南回りルートの考古学-分かっていること/分かっていないこと(3)</a>
</li>
</ul>
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<iframe frameborder="0" marginheight="0" marginwidth="0" scrolling="no" src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=asiansophia-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=4140910283" style="height: 240px; width: 120px;"></iframe>
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Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-63658815417903354952012-08-11T16:16:00.000+09:002012-08-12T15:25:24.304+09:00-新刊紹介-ネアンデルタール人奇跡の再発見(小野 昭著)<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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<span style="text-align: left;"> 前回の投稿に引き続き、プロジェクトの調査の背景についてご紹介しようと考えていたのですが、ちょうど、関連する新刊書籍が届きましたのでそちらを先に紹介させていただきます。</span></div>
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<span style="text-align: left;"><br /></span></div>
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<img border="0" src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/512cWwOoBXL._SL500_AA300_.jpg" /></div>
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小野 昭著『ネアンデルタール人 奇跡の再発見』朝日新聞社(朝日選書891:ISBN978-4-02-259991-9)です。奥付では、2012年8月25日刊となっていますが、今日(8/11)現在、Amazon.co.jpでも購入可能になっています(書店ではまだ確認してません、スミマセン...)。<br />
著者は、明治大学黒曜石研究センター特任教授で、日本旧石器学会会長、日本第四紀学会副会長をつとめられています。また長年、ドイツ各地の研究者と交流を重ねて、現地へも足しげく訪れられているということで、本書でも、そうした交流と現地調査の成果が随所に表れています。<br />
さて、そんな本書の内容ですが...なにぶん、本日手もとに届いたばかりですので(ありがとうございます)、ざっと概要だけ...<br />
ドイツ・ネアンデル渓谷(つまり、ネアンデル・タール)で発見された最初のネアンデルタール人の人骨化石は、ネアンデルタール人とはどのような人類であったかを説明するための重要な基準資料です。表紙カバー上部に掲載された、眉の上が強く盛り上がり、頭のてっぺんが平たく後頭部がでっぱった頭蓋骨の写真やイラストは、みなさんも繰り返し目にしたことがあるのではないかと思います。<br />
ところがこの人骨化石、かんじんの年代や、どのような石器やそのほかの生活の痕跡と一緒に出土したのかがまったく分からなかったのです。と言うのも...遺跡自体が、化石人骨の発見後に石灰岩の採掘によってほとんど消滅してしまったからです。<br />
しかしそのような状況にもかかわらず、100年以上経った後のドイツの研究者たちは、わずかな手がかりから出土遺跡の場所を突き止め、そこに辛うじて残されていた遺跡の一部分を詳細に発掘調査しました。これによってようやく、オリジナルのネアンデルタール人についていろいろと詳しく知ることができるようになったのです。<br />
本書は、その経緯を詳しく紹介するとともに、そもそもなぜ、わざわざこのような調査がなされなければならなかったのかという前提、背景、そして調査や分析の方法などにも詳しく言及しています。手軽な装丁、サイズですが中身はぎっしり。専門の方はもちろん、人類の進化や旧石器時代の考古学に多少なりとも興味がある方にお奨めです。<br />
もちろん、わたしたちにとっても...「...基礎条件を欠いた資料は、たとえ資料自体が素晴らしいものであっても、資料的価値はきわめて低い。」(p.5:プロローグより)という言葉をしっかりと胸に刻んで、現地調査に臨みます。これからも追って紹介しますが、わたしたちの調査地ヴィーサル・ヴァレーには、素晴らしい石器がこれでもか!と落ちているのですが、ただ面白がってそれらを拾い集めるだけでは考古学にならないのですから。</div>
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<iframe frameborder="0" marginheight="0" marginwidth="0" scrolling="no" src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=asiansophia-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=402259991X" style="width: 350px;"></iframe>
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</div>Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7922802673796165029.post-81168458054533065622012-08-10T08:30:00.002+09:002012-08-12T15:21:02.377+09:00ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクト 調査の目的<div dir="ltr" style="text-align: left;" trbidi="on">
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<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiRQFOp2NTsmMH8eTFNM9Uju-Jhq28ItoeNegQWukncWrCmGlbHaAhwgs2d42U6hPdtgECXge8zuyub0IE5dILsxKWu20uJW5Y4QLdnK4Tw6KdhM64ZPdVUsmNygfhz9EKT5fAtSKiWD2uV/s1600/mh_dispersal.gif" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiRQFOp2NTsmMH8eTFNM9Uju-Jhq28ItoeNegQWukncWrCmGlbHaAhwgs2d42U6hPdtgECXge8zuyub0IE5dILsxKWu20uJW5Y4QLdnK4Tw6KdhM64ZPdVUsmNygfhz9EKT5fAtSKiWD2uV/s640/mh_dispersal.gif" width="400" /></a></div>
<span style="font-size: x-small;"><br /></span>
なぜ、わたしたちはパキスタンで調査をしているのでしょうか? なにを調査しているのでしょうか?<br />
わたしたちは、アフリカに誕生した現代人ホモ・サピエンスが、世界各地へと広まっていった「グレート・ジャーニー」の足跡を探しています。<br />
人類の進化については、毎年のように新たな発見があり定説が塗り替えられています。20年以上前の教科書には、アフリカに誕生した猿人が原人に進化し、アジアやヨーロッパに広がり、各地で旧人から新人に進化した、と書かれていたのではないでしょうか?<br />
しかし遺伝学の進歩と化石人類学とが結びついて、1990年代以降は、現代人の祖先は約15~12万年前にアフリカで誕生し、その後、世界各地へ広がり、アジアやヨーロッパではそれ以前に暮らしていた原人や旧人と交代したとされています。<br />
遺伝学の研究は、現代人がもっている遺伝的な変異、多様性が分岐していった年代(ここでは、母親からだけ引き継がれるミトコンドリアDNA)を逆算して、分岐のおおもとがいつ起こったのかを計算します。また多様性が大きな地域ほど、早くに分岐がはじまった=変化の出発点だったと考えるわけです。そして、アフリカに現代人の共通祖先となる女性がいたはずだとする「ミトコンドリア・イブ」仮説が唱えられました。<br />
一方、化石人類学では、アフリカから、ほかのどの地域よりも古い現代人の特徴を持つ人骨(解剖学的現代人と言います)が見つかることが知られていました(アフリカでは10万年前より古い<>アジアやヨーロッパでは4~3万年前)。この2つの成果が組み合わさり、現代人のアフリカ単一起源説が成立したのです。<br />
そうなると、次の疑問は、アフリカから世界へ、いつ、どのように現代人ホモ・サピエンスが広がっていったのか、です。時はまさに、最新の氷河時代(8~1万年前)です。人類の壮大な旅、グレート・ジャーニーのはじまりです。<br />
<br />
わたしたちの調査地、ヴィーサル・ヴァレーには、そうした現代人のグレート・ジャーニーの足跡が残されています。その年代や、人びとの暮らし、他の地域とのつながりを知るための手がかりを得ることが、わたしたちの調査の目的なのです。<br />
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ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトの調査の目的については、ウェブ・サイトをご覧下さい。<br />
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<a href="https://sites.google.com/site/veesarvalley/subject_jp" target="_blank">ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクト 調査の目的</a></div>
</div>Anonymoushttp://www.blogger.com/profile/12875108108613240263noreply@blogger.com0日本, 東京都府中市35.6689735 139.477661435.6173745 139.39869739999997 35.7205725 139.5566254