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2012/08/11

-新刊紹介-ネアンデルタール人奇跡の再発見(小野 昭著)

 前回の投稿に引き続き、プロジェクトの調査の背景についてご紹介しようと考えていたのですが、ちょうど、関連する新刊書籍が届きましたのでそちらを先に紹介させていただきます。


 小野 昭著『ネアンデルタール人 奇跡の再発見』朝日新聞社(朝日選書891:ISBN978-4-02-259991-9)です。奥付では、2012年8月25日刊となっていますが、今日(8/11)現在、Amazon.co.jpでも購入可能になっています(書店ではまだ確認してません、スミマセン...)。
 著者は、明治大学黒曜石研究センター特任教授で、日本旧石器学会会長、日本第四紀学会副会長をつとめられています。また長年、ドイツ各地の研究者と交流を重ねて、現地へも足しげく訪れられているということで、本書でも、そうした交流と現地調査の成果が随所に表れています。
 さて、そんな本書の内容ですが...なにぶん、本日手もとに届いたばかりですので(ありがとうございます)、ざっと概要だけ...
 ドイツ・ネアンデル渓谷(つまり、ネアンデル・タール)で発見された最初のネアンデルタール人の人骨化石は、ネアンデルタール人とはどのような人類であったかを説明するための重要な基準資料です。表紙カバー上部に掲載された、眉の上が強く盛り上がり、頭のてっぺんが平たく後頭部がでっぱった頭蓋骨の写真やイラストは、みなさんも繰り返し目にしたことがあるのではないかと思います。
 ところがこの人骨化石、かんじんの年代や、どのような石器やそのほかの生活の痕跡と一緒に出土したのかがまったく分からなかったのです。と言うのも...遺跡自体が、化石人骨の発見後に石灰岩の採掘によってほとんど消滅してしまったからです。
 しかしそのような状況にもかかわらず、100年以上経った後のドイツの研究者たちは、わずかな手がかりから出土遺跡の場所を突き止め、そこに辛うじて残されていた遺跡の一部分を詳細に発掘調査しました。これによってようやく、オリジナルのネアンデルタール人についていろいろと詳しく知ることができるようになったのです。
 本書は、その経緯を詳しく紹介するとともに、そもそもなぜ、わざわざこのような調査がなされなければならなかったのかという前提、背景、そして調査や分析の方法などにも詳しく言及しています。手軽な装丁、サイズですが中身はぎっしり。専門の方はもちろん、人類の進化や旧石器時代の考古学に多少なりとも興味がある方にお奨めです。
 もちろん、わたしたちにとっても...「...基礎条件を欠いた資料は、たとえ資料自体が素晴らしいものであっても、資料的価値はきわめて低い。」(p.5:プロローグより)という言葉をしっかりと胸に刻んで、現地調査に臨みます。これからも追って紹介しますが、わたしたちの調査地ヴィーサル・ヴァレーには、素晴らしい石器がこれでもか!と落ちているのですが、ただ面白がってそれらを拾い集めるだけでは考古学にならないのですから。

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