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2012/08/21

ラオスの洞窟遺跡で~4万6千年前の解剖学的現代人が出土(PNAS)

 「南回りルートの考古学」シリーズの下書きが途中のまま、また新しいニュースです。
 東南アジアはラオスのタン・パ・リン(Tam Pa Ling)洞窟における、フランス・アメリカ・ラオス・オーストラリアの研究者からなるチームが、大陸部では最古級の現代人ホモ・サピエンスの化石を発掘したと、8/20付(日本時間では8/21)のアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)電子版に発表しました。原著論文はこちら:F. Demeter, L. L. Shackelford et al. (2012) Anatomically modern human in Southeast Asia (Laos) by 46 ka, PNAS, doi: 10.1073/pnas.1208104109(本文閲覧は有償またはログインが必要です)
 第2著者の所属するイリノイ大学のリリー(Lao skull earliest example of modern human fossil in Southeast Asia)には出土した頭骨などの画像が掲載されています(下の写真)。またスライドショーで、遺跡の景観や発掘調査風景、層序や年代などを見ることができます。ぜひご覧ください(なお原著論文のSupporting Informationにも同じものが掲載されています。PDF版、閲覧・ダウンロードはフリー)
 洞窟内の写真を見ると、最奥部が急激に落ち込んでいて、その部分の表層から2.35m掘り下げたところから人骨が出土しているようです。トレンチは、ほとんど縦坑の様相です。
 年代は、人骨出土位置の上下の堆積物の14CおよびOSL年代測定から、5.1~4.6万年前、骨自体のウラン・シリーズ法による測定値は最大6.3万年前ということです。新しい方の年代でも、これまで東南アジア最古だった、マレーシア・ニアー(Niah)洞窟下層と匹敵するかそれよりも古くなる可能性がありますし、古い方の年代は、調査者らが強調しているように、遺伝学的に推計されている南アジア・東南アジアへのホモ・サピエンスの進出年代にほぼ重なる数値です。しかも、中国南部に近く東アジアへのサピエンスの進出を考える上でも重要な場所ですね。
 しかし洞窟の写真を見ている限りでは、居住遺跡とは思えないですね。どのような石器を使い、どのような生活をしていたのか、それが分かるような資料は出土しているのでしょうか。

 ちなみにこの遺跡、昨年11~12月に国立科学博物館で開催された国際シンポジウム「旧石器時代のアジアにおける現代人的行動の出現と多様性」でも発表されていましたね。その時はまだ、今回人骨が出土した深度まで到達していなかったと思います。シンポの後、またフィールド調査だとおっしゃっていたので、まさにその時に出土したのでしょうか?

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