なぜ、わたしたちはパキスタンで調査をしているのでしょうか? なにを調査しているのでしょうか?
わたしたちは、アフリカに誕生した現代人ホモ・サピエンスが、世界各地へと広まっていった「グレート・ジャーニー」の足跡を探しています。
人類の進化については、毎年のように新たな発見があり定説が塗り替えられています。20年以上前の教科書には、アフリカに誕生した猿人が原人に進化し、アジアやヨーロッパに広がり、各地で旧人から新人に進化した、と書かれていたのではないでしょうか?
しかし遺伝学の進歩と化石人類学とが結びついて、1990年代以降は、現代人の祖先は約15~12万年前にアフリカで誕生し、その後、世界各地へ広がり、アジアやヨーロッパではそれ以前に暮らしていた原人や旧人と交代したとされています。
遺伝学の研究は、現代人がもっている遺伝的な変異、多様性が分岐していった年代(ここでは、母親からだけ引き継がれるミトコンドリアDNA)を逆算して、分岐のおおもとがいつ起こったのかを計算します。また多様性が大きな地域ほど、早くに分岐がはじまった=変化の出発点だったと考えるわけです。そして、アフリカに現代人の共通祖先となる女性がいたはずだとする「ミトコンドリア・イブ」仮説が唱えられました。
一方、化石人類学では、アフリカから、ほかのどの地域よりも古い現代人の特徴を持つ人骨(解剖学的現代人と言います)が見つかることが知られていました(アフリカでは10万年前より古い<>アジアやヨーロッパでは4~3万年前)。この2つの成果が組み合わさり、現代人のアフリカ単一起源説が成立したのです。
そうなると、次の疑問は、アフリカから世界へ、いつ、どのように現代人ホモ・サピエンスが広がっていったのか、です。時はまさに、最新の氷河時代(8~1万年前)です。人類の壮大な旅、グレート・ジャーニーのはじまりです。
わたしたちの調査地、ヴィーサル・ヴァレーには、そうした現代人のグレート・ジャーニーの足跡が残されています。その年代や、人びとの暮らし、他の地域とのつながりを知るための手がかりを得ることが、わたしたちの調査の目的なのです。
ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトの調査の目的については、ウェブ・サイトをご覧下さい。
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