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2013/10/30

再び、ハイルプール

 すっかり更新が滞っておりました。前回が、英国オックスフォード大学でのワークショップへの参加予告だったので、はや半年以上経過してしまいました。この間、学会発表などを通じていろいろな方のご意見を頂戴し、またとくに印パ国境を挟んで反対側、インド・ラージャスターン州のタール砂漠で調査を続けているイギリス隊とは継続的に情報交換をするようになりました。彼らの成果はすでに公表されているので、ここで紹介したいと思います。
 またわれわれの方でも、2012年9月の調査で得た年代測定試料の処理・年代測定が完了しました。結果については、正式に論文として発表することに成りますので、ここでお知らせすることはできません。もう少々お待ちください。なお、100%期待通りというわけにはいきませんでしたが、インド側でのイギリス隊の成果と照らし合わせて納得の行くものですし、何より、ここパキスタンにおいては初めてとなる重要な成果であることは間違いありません。

 そして、年代測定結果を含めた論文をまとめるにあたって、出土・採集石器の詳細を明らかにするために、再度、ハイルプールのSALU(シャー・アブドゥル・ラティーフ大学)に来ております。今回は短い日程なので、博物館での資料調査に専念する予定ですが、幸いにも、ヴィーサル教授の後任の新館長マストゥール・ブハーリー教授(女性です)のご配慮で、エアコン付の一室を専用にあてがっていただきました。
 出土・採集石器は、マッラー教授、ヴィーサル教授のご配慮で次々に運び込まれてきますので、分類・記載・計測・写真撮影を行なっていきます。


 なかなか外を散歩する時間もありませんが、作業部屋の外は水牛がのんびり草を食んでます^^


 引き続き、こちらでの様子を報告していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

2013/04/11

オックスフォード大学の国際ワークショップに参加します

 先日(4/7)は、やや不安な天候でしたがインド考古研究会例会での発表を無事に終えることができました。まだまだ取り組みはじめたばかりの調査研究プロジェクトなだけに、いただいたご質問には答えきれないところが少なくないのですが... これからの進展にご期待いただければと思います。

 さて、先のポストとは前後してしまいますが、今週末からイギリスへ行ってきます。今年1月のインド調査でお世話になったカルナタカ大学のラーヴィー・コリセッター教授と、教授の共同研究者であるオックスフォード大学のマイケル・ハスラム氏に招待いただき、英国アカデミーによる英印共同研究「アフリカを出て、南アジアへ: Out of Africa, Into South Asia」のワークショップに参加するためです。ワークショップはオックスフォード大学を会場として、4/16~17両日、イギリスとインドを中心とする各国の考古学者、遺伝学者、古環境研究者などが参加しする予定とのことです。本プロジェクトからは、野口が参加します。
 まだ調査を開始したばかりの本プロジェクトに注目していただき、大変ありがたいことです。それだけ、調査・情報の空白地であるパキスタンというフィールドが注目されているのだと思います。
 なお、プログラムを見ると1日目は朝8時半から夕方5時までみっちり発表、2日目は朝9時から夕方5時までラウンド・テーブルでの討論、となっています。かなりのハードスケジュールですが、またとない機会ですから、最先端の研究をたっぷり吸収して来たいと思います。
 ワークショップの内容については、追って報告したいと思います。


(画像は、現在、鋭意(?)作成中の発表資料)

 なおロンドンでは、シリアの発掘調査で一緒だった旧友と13年ぶりに再開する予定です。これもまた楽しみ^^

2013/03/31

西アジア発掘調査報告会で2012年調査について報告しました

 3月23・24日の2日間にわたって、東京・池袋の古代オリエント博物館を会場として開催された、「平成24年度 考古学が語る古代オリエント/第20回西アジア発掘調査報告会」で、2012年2月と9月に実施したヴィーサル・ヴァレーでの発掘調査について報告してきました。今回は、日本において発掘調査について報告する最初の機会ということで、発表時間の制約もありましたし、調査の背景から経緯、現在進行中の分析の途中成果までを簡潔(?)にまとめて発表させていただきました。もっと、現地の様子や調査の実態を詳しく知りたいと言う方は、先にご案内いたしましたインド考古研究会例会へ、ぜひお越しください。こちらでは、現地の様子など多数の写真にて詳しく報告させていただく予定です。

 それはさておき、今回の報告会では、日本隊による多数の発掘調査プロジェクトの成果が報告されました。調査の対象となる遺跡の性格や時代は多様ですが、最新の機器や方法を導入して海外隊の調査と比肩できる成果が次々と報告されています。大いに刺激を受けると同時に、予算・人員的に規模が小さな(小さ過ぎる;)本プロジェクトでも導入可能な方法を考えるよい機会となりました。
 また本プロジェクトは、パキスタン、南アジアでの調査でありますが、同じく低緯度の乾燥砂漠地帯で進められている調査の報告などは、比較研究の上でも大いに参考になります。
 今後とも、継続的に調査成果をこの報告会で発信できるようにがんばって行きたいと思います。

(報告風景の写真は、下岡順直氏にご提供いただきました。ありがとうございますm(_ _)m)

追記:PC版では、ページ右側のコラムに、学会・研究会発表情報、新刊書籍等、プロジェクトからの発信に関する情報を掲載するようにしました。ご参照ください。

(報告集の表紙)

2013/03/17

インド考古研究会のお知らせ

 今週末は第20回西アジア発掘調査報告会です。2012年に実施した調査の経緯と経過について報告いたします。なお、発掘調査時に採取した年代測定および堆積物の分析も結果が出はじめていますが、こちらについては、もう少し検討を加えてから順次報告することになります。もう少々お待ちください。

 引き続き、年度が替わって最初の土曜日、4月6日には、インド考古研究会例会でも発表します。会場は、東京メトロ丸の内線・南北線「後楽園」駅、都営地下鉄三田線・大江戸線「春日」駅と直結した文京区シビックセンター内になります。会員以外の方も、会場費・資料代(数百円)のみでご参加いただくことができます。よろしければどうぞ。

 なおインド考古研究会例会では、調査の内容はもちろんのこと、現地の風景や生活、周辺の考古遺跡の現状なども報告する予定です。旧石器時代に限らず、南アジア、パキスタンに興味をお持ちでしたらぜひお越しください。お待ちしております。


インド考古研究会例会
  日 時 :2013年4月6日(土)18:00開場 18:30~例会発表
  場 所 :文京区シビックセンター内3-A会議室
  発表者 :野口 淳
  タイトル:パキスタン・シンド州の旧石器時代遺跡群調査
:ヴィーサル・ヴァレー・プロジェクト2012」


(写真上:2012年9月の調査参加者、中央左が下岡氏、同右がマッラー教授、その右が野口)
(写真下:2012年9月の発掘風景。第42地点で試料採取用トレンチを掘削中。気温だいたい37度くらい)

2013/03/13

第20回西アジア発掘調査報告会のお知らせ

西アジア発掘調査報告会は、西アジア考古学会と古代オリエント博物館の主催による、西アジアを中心に広く周辺地域も含め日本隊が実施している考古遺跡の発掘調査の成果が発表される場です。「西アジア」とありますが、東ヨーロッパ(ブルガリア)からアラビア、イラン、中央アジア諸国、そしてパキスタンとインドまで、幅広い地域での発掘調査が対象となっています。一説によると、アレクサンドロス大王が遠征した範囲はすべて含まれるのだとか。
 今年度は、3月23・24日の両日、例年通り、池袋はサンシャインシティ文化会館にある古代オリエント博物館を会場として16件の発掘調査報告が行なわれます。わたしたちヴィーサル・ヴァレー・プロジェクトも2012年調査の成果を報告します(23日10:10~の予定です)。資料代¥1,000でどなたでも参加できますので、ご興味をお持ちの方はぜひ。今回は、カザフスタン、キルギスタン、イラン、アゼルバイジャン、トルコ、ヨルダン、パレスティナ、エジプト、ブルガリアでの調査の報告のほか、23日午後には第20回を記念する講演会、24日午後にはトルコ人研究者による講演会も催されます。
 報告会の案内: →西アジア考古学会 →古代オリエント博物館
 プログラムの詳細はこちら

2013/02/06

石器文化研究会第259回例会のご案内

 この2月から5月にかけて、2012年中の調査成果を踏まえた報告、研究発表を各所で行なわさせていただく予定となっております。スケジュール・プログラムが定まったものから、順次、ご案内させていただきます。
 まずはじめは、石器文化研究会第259回例会です。「アウト・オブ・アフリカII 南回りルートを追跡する」と題して、アラビアからインドまでの地域における最近(2012年12月まで.一部、最新の情報も追加あり?)の調査・研究動向を紹介するとともに、ヴィーサル・ヴァレーでの発掘調査、インドでの現地踏査などの成果も紹介したいと思います。なお、研究会のホームページはまだ情報が更新されていないようですので、会員向けメーリング・リストに配信された内容を以下に記しておきます。石器文化研究会の例会は、会員外でも資料代のみで参加できますので、興味をお持ちの方は、是非どうぞ!!
 なお、ヴィーサル・ヴァレーにおける調査の様子や成果の速報については、3月に予定されているインド考古研究会(日程未定)、および西アジア発掘調査成果報告会(3月23~24日)でも報告する予定です。


石器文化研究会第259回例会

日 時:2013年2月16日(土)14:00~
場 所:明治大学考古学実習室(猿楽町第二校舎3階) ※猿楽町構内案内図はこちら
題 目:「アウト・オブ・アフリカII 南回りルートを追跡する」
概 要:遺伝人類学研究の進展とともに、現代人の出アフリカ後の拡散ルートとして注目されている「南回りルート」に関する調査、研究の現状をアラビア~インドまで概観し、また関連遺跡や石器群について紹介する。

【参考文献】 野口(2013)「南アジアの中期/後期旧石器時代 「南回りルート」と地理的多様性」『ホモ・サピエンスと旧人 旧石器考古学から見た交替劇』、六一書房

写真は、インド南部ジュワラプーラム遺跡群の景観(2013年1月撮影)

2013/02/05

しばらくぶりですが、経過報告です

 あけましておめでとうございます。
 前回の投稿が夏季調査開始時だったので、丸4ヶ月以上も音沙汰なしでした。申し訳ありません、いろいろと忙しかったので(言い訳)。
 さてこの間、夏季調査はもちろん無事終了しました。3地点に4ヵ所の調査区を設定して発掘、初期の目的を達成しただけでなく、予期した以上の成果が得られました。現在は、発掘調査で得られたサンプルの分析(年代・堆積)および発掘調査データの整理を行なっているところです。
 また2012年10月からは、3Dレーザー・スキャナを利用した石器の三次元計測と解析システムを確立するための作業にも取り掛かりました。
 さらに2012年12月から2013年1月にかけて、私(野口)は、アラビア半島南部のオマーンで遺跡分布調査に従事してきました。詳しい成果はまだ公表できませんが、ここでも「南回りルート」に関連する知見が得られました、とだけ言っておきましょう。
 そしてオマーンから帰路、インド南部の重要遺跡、ジュワラプーラム遺跡群を、インド側の調査代表である、カルナタカ大学のラーヴィー・コリセッター教授のご案内で、訪問することができました。ここでは、なんと本物のYTT(新規トバ・タフ)を見て、触って、サンプルを取ってくることができました!!
 一連の調査や分析の経過や成果については、順を追って紹介していきたいと思います。できる限り定期的に更新できるようにしたいと思いますので、もう少々お待ち下さい(材料は、たくさんありますので...)。

写真は、ヴィーサル・ヴァレーでの夏季調査風景。砂丘を構成する砂層から、念願の旧石器を発掘することができました!!

 こちらは、砂丘の形成年代を知るための深掘りトレンチ。ここでも、狙い通りに砂丘の層序を捉えることができました。

地層を確認して、サンプルを採取する下岡さん。現在、日本国内で分析中です。

2012/09/17

2012年夏季調査の目的

 本日(9/17)、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学(SALU)にて、今回の調査についての日程や方法を相談しました。
 今回の調査の目的は、ヴィーサル・ヴァレー地区遺跡群の年代を確かめることです。
 このために、大きく2つの調査を行ないます。

 ひとつめは、遺跡群が形成され、残されている地形=砂丘の年代を知ること。このために、遺跡群が広がる砂丘の全体を踏査して、その状態を確認しながら、砂丘の砂のサンプルを採取する地点を選定します。必要に応じて、斜面を削ったり、トレンチ(試掘坑)を掘り下げます。採取したサンプルは、光ルミネッセンス法による年代測定を実施します。これは、砂丘砂に含まれる石英粒子を対象として、それが埋没した年代を明らかにするものです。また、地点ごとに、砂粒の大きさの割合や含まれる鉱物の分析を行ないます。
 これらの年代測定や分析は、砂丘が、いつ頃、どのようにできたのか、またその後、どのような変化を被ったのかを明らかにするものですが、必ずしも遺跡そのものの年代を明らかにするわけではありません。砂丘が形成され、移動したり、削られたりする過程の中で、どのように遺跡や遺物が残されたのかを確かめなければなりません。
 もちろん、そのための調査、分析も実施する予定ですが、まずは、対象となる砂丘についてその形成の年代と過程を把握することが出発点になるのです。
 ...と言っても、何のことか分かりづらいですよね。追って、もう少し詳しく解説したいと思います。
 また、ヴィーサル・ヴァレー地区にはおもに旧石器時代(10~3万年前くらい:中期~後期旧石器時代と推測しています)の遺跡が、砂丘の頂部、斜面から砂丘間の凹地に残されていますが、10kmほど北北西のドゥービ地区の砂丘には中石器時代(1万年~8千年前くらい?)の遺跡が、また東~北東のナラ川沿いの砂丘には新石器時代の遺跡が残されています。こうした、明らかに年代の異なる遺跡が残されている砂丘についても、年代や形成過程を知るための調査、分析が実施できるかどうかを確かめることも、今回の滞在期間中に行ないたいと考えています。ヴィーサル・ヴァレー地区だけでなく、一帯の砂漠の環境がどのように変化し(または変化せず)、その中で人類がどのような適応を遂げ、生活していたのかを知ることが、将来的な目標の一つだからです。
(写真は、2012年2月に予備的な発掘調査をした第85地点。比高差5mほどの小丘の上に石器集中部が残されています)

ふたつめは、考古学的に遺跡の年代を推定するための材料=特徴的な技術や形態を示す石器を表面採集により収集することです。ヴィーサル・ヴァレー地区で見つかっている100近い地点のうち、いくつかの地点を選定して、1×1mの範囲に残されている石器を一定数量以上ずつ拾い集めます。そして、そこに含まれる石器の型式、点数、細かな特徴を確認します。
 この方法では、数値的な年代を知ることはできませんが、近隣地域の資料と比較することで、おおよその年代、時代の目星をつけることは可能です。また、石器の型式、その組み合わせは、石器を使った生活の内容を復元するためにも重要な手がかりとなるでしょう。

 今回は、この二つの方法中心に、さらにいくつかの記録・分析方法を組み合わせて、ヴィーサル・ヴァレー地区に残された旧石器時代遺跡の実態を解明するための調査に取りかかります。
 現地調査は、明後日9/19から開始する予定です。

2012年度夏季調査がはじまりました

 事前にお知らせしていなかったので唐突ですが、2012年度夏季調査を開始しました。これから、約2週間の予定で、日本からは野口(考古学)、下岡(年代測定)の2名が参加、パキスタン側のマラー教授、ヴィーサル教授らと、分布調査、年代測定および堆積学的分析のためのサンプリングを行ないます。
 日本から、調査地のあるハイルプールまで、今回は2日がかりの移動でした(下岡さんは日本国内の移動があったので3日がかり)。まずは、成田から、バンコク経由でカラチまで。今回は乗り継ぎが良かったので、日付けが変わらないうちにカラチに到着です。乗り継ぎ待ちの2時間を入れて、合計14時間の移動です。
 そして、そのままカラチ泊。写真は、ホテルの朝食です。なかなか豪華なバイキング形式。早速、カレーです。
 翌日は、夕方の国内線でカラチからサッカルまで移動。双発のターボプロップ機(ATR42)で、飛行時間は1時間ちょっとなのですが、途中、モヘンジョ・ダーロ空港を経由するので、約2時間かかります。カラチ発が1時間弱遅れたので、離陸してすぐに日没となりました。
 写真は、サッカル空港に降り立った搭乗機。荷物もすべて無事到着。空港までマッラー教授に出迎えていただき、途中、教授のお兄さんの経営するレストランで夕食をとった後、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学のゲストハウスに投宿しました。ここは、エアコン、WiFi完備できわめて快適です。
 パキスタン全土は、先々週~先週(9月第1~2週)にかけて、モンスーン後半の集中降雨に見舞われ、一部で洪水や土砂災害の被害があったそうです。ハイルプール市内も、西~南を流れるミルワー運河が増水して一部の地区が冠水したとのこと。大学までの途上、車窓から、まだ冠水している畑や住宅街の中の空き地が見られました。
 依然として湿度が高く、曇り空ですが、もう雨は降らないようです。
 本日(9/17)は、セキュリティーの登録などもろもろの手続きと、マッラー、ヴィーサル両教授と調査の段取りについての打ち合わせです。フィールドへは、明後日(9/19)から出る予定です。
 引き続き、調査の進捗状況など、本ブログで報告しますので、期待してお待ちください。

2012/09/01

速報・インダス考古学に関する国際会議


 前回のポストから少々間が空いてしまいましたが、その間に、下記の国際会議の開催が決まりました。どこよりも早く、お知らせします。

New Horizons through novel discoveries in Indus civilization: International Conference on Indus Archaeology.
(Held at Shah Abdul Latif University Khairpur Sindh, Pakistan from February 12th 2013 to February 16th  2013). 

最新の発見にもとづくインダス文明研究の新展開-インダス考古学国際会議
(2013212日~16日、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学、ハイルプール、パキスタン)

 会議のタイトルは「インダス文明」となっていますが、その中に「石器時代の考古学」というパネルが設けられ、旧石器~中石器時代を対象とした議論が行なわれることとなりました。このパネルは、プロジェクト・メンバーでもあるG.M.ヴィーサル教授と私(野口)がオーガナイザーとなります。インド、イギリス、アメリカ、スペインなどの研究者を招聘して、1)南アジアの前期~中期旧石器時代、2)南回りルートの現代人の拡散、3)更新性後半~完新世初頭の砂漠環境の変化と人類の適応、の3つのセッションを設ける予定で、現在、プログラムの調整を開始したところです。
 わたしたちのプロジェクト自体ははじまったばかりで、まだ議論に供することのできるデータは乏しいのですが、この機会に多くの研究者に遺跡や資料を見ていただき、今後の調査に向けて有意義な議論を深めるとともに、プロジェクトをひろく周知する機会になればと期待しています。
 今後、新たな情報が入り次第、ここで報告して行きたいと思います。
 なお、本国際会議では、開催時に論文集も同時刊行される予定です。 

(以下、趣旨説明)
 インダス考古学は、探査、発掘を通じて収集される情報とともに、最新の手法による出土遺物や遺構の分析、解読によって加えられる知見により、つねに変化している。分析技術の進歩は、過去の生活をより具体的に解き明かし、社会や文化の多様性と地域性を、集団や行動のレベルで説明することを可能にした。その上で今、すべての新発見を一同に会し、一連の歴史として捉えること
必要とされています。今般の国際会議では、いくつかのパネルがそれぞれ異なるテーマに焦点を当て、研究の進展を明らかにします。
 現在、パキスタンに属するインダス川流域は、西アジア、中央アジア、そして南アジアの交差点として、人類の出アフリカにおける重要な位置を占めていました。旧石器時代の人々がユーラシアを東へと進もうとしたとき、峻険なヒマラヤ山脈により可能なルートは南北に分割されます。そのうち南側のルートを辿った人びとは、必ずやパキスタンにその足跡を残したでしょう。人類拡散の痕跡は、研究者たちによりその文化的側面が詳細に説明されるでしょう。そして長きにわたる石器時代の最後に新石器時代の文化変化が起こり、都市文明へと続くのです。
 新たに発見、調査された都市遺跡は、非常に豊かな生活スタイルと文化的複雑さを明らかにしつつあります。長距離交易による商品は市場に蓄積されました。銅、宝石、海産の貝などは、テラコッタ、ファイアンス、装飾された宝石や金属製品などの工芸品とともに流通して文化の一部となるとともに、古代南アジアの都市からの訪問者を魅惑しただろう。交易従事者は、テラコッタもしくは金属製のパスポートを識別と認証のために与えられ、そこに刻まれた記号によりメッセージが確認されただろう。インダスの文化は、確実にある水準に達していたのである。今まさに、研究者たちはそれぞれの新たな発見を持ち寄り、共有し、議論するときである。それは、まだ解明されていないインダス文明の実態を明らかにするための重要な機会となるだろう。シャー·アブドゥル·ラティーフ大学の当局は、インダス考古学の進展に貢献するすべての研究者を歓迎します。
 なお今般の会議は、1)石器時代の考古学、2)グジャラート、ラージャスターンの考古学、3)インダスの考古学、4)インダス文明後の考古学の4つのパネルで構成される予定です。

(1) Archaeology of Stone Age, Organized by  NOGUCHI Atsushi and G.M. Vessar
(2) Archaeology of Gujarat and Rajasthan; organized by Prabodh Shirvalkar and Rajesh S.V.
(3) Archaeology of Indus land Organized by Q. H. Mallah and J.M. Kenoyer
(4) Archaeology of Post Indus to onwards organized by Mastoor Bukhari and Tasleem Abro.
(写真は、今年2月に竣工したばかりのシャー・アブドゥル・ラティーフ大学の中央校舎。学長室や会議室など最新の設備があるので、たぶん国際会議はここで開催されるのではないかと。左は、Q.H.マッラー教授。国際会議開催の中心人物)

2012/08/18

インド考古研究NEWS

 先般刊行された『インド考古研究』33号に、2012年春季調査の概要がNEWSとして掲載されました。

  • 野口 淳・小茄子川歩 (2012) PJAM/パキスタン-日本考古学共同調査2012-1 ヴィーサル・ヴァレー地区旧石器時代遺跡群予備調査・インダス式印章資料調査.インド考古研究,33:74-79.インド考古研究会(神奈川・平塚)
 『インド考古研究』(ISSN0910-0326)は、インド考古研究会が編集・発行している、日本唯一の南アジア考古学・美術史の専門誌です。今回、研究会のご好意でPDFファイルを提供していただきましたので、ウェブ・サイトのダウンロード・ページにアップロードしました。よろしければ、ご覧下さい。

 なお『インド考古研究』の同じ号には、プロジェクト・メンバーでもあるカシード・マッラー、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学(SALU)教授らによる、最近のシンド州北部における考古学調査の動向に関する論文(英文)も掲載されています。

  • Q. H. Mallah, N. Shaikh, G. M. Veear, H. Kondo & T. Abro (2012) An Overview o the Recent Archaeological Research in Northern Sindh, Pakistan. Indo-Kōko-Kenkyū (Studies in South Asian Art and Archaeology), 33: 19-38.

ヴィーサル・ヴァレー地区を含む旧石器時代の遺跡から、インダス文明期の都市遺跡ラカンジョ・ダーロ(Lakhan Jo Daro)、タール砂漠で発見されている先文明~文明期についても紹介されています。興味のある方は、インド考古研究会までお問い合わせください。また六一書房さんからも購入できると思います(8/17現在、最新刊についてはHP未掲載)。

 ヴィーサル・ヴァレー地区の予備調査の成果と見通しについては、すでに日本旧石器学会の会誌、『旧石器研究』に投稿、掲載されています。『旧石器研究』については、日本旧石器学会にお問い合わせいただくか、また六一書房さんからも購入できると思います(8/17現在、最新刊についてはHP未掲載)。

  • 野口 淳・G.M.ヴィーサル・Q.H.マッラー・N.シェイフ・近藤英夫 (2012)  パキスタン・イスラム共和国シンド州ヴィーサル・ヴァレー地区の中期・後期旧石器時代資料. 旧石器研究, 8:169-179.日本旧石器学会(東京).
 上掲論文を含め、プロジェクトの成果に関する発表資料等についてはウェブ・サイトの資料庫ページに掲載していきます。ご参照下さい。
 また現地における調査の経過などは、追って本ブログやウェブ・サイトで紹介したいと思います。砂漠における旧石器遺跡の調査の様子など、ご期待ください。
 最後に、2012年春季調査の参加メンバー(一部)の写真です。写真中央の筆者(野口)を挟んで、左がG.M.ヴィーサル教授(SALU考古学研究室、考古学・人類学博物館長)、右がQ.H.マッラー教授(SALU考古学研究室主任)です。2012年2月23日撮影。

 みな、それなりに着込んでいますが、日中は20~25℃くらい、そして遮るものがないのでペットボトルを日向に置きっ放しにしておくと30分で60℃のお湯になるくらいでした。さて、9月後半に予定している夏季調査は、いったいどうなるのでしょうか?